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神と人と魔の狭間で

「ダメですね。 手に負えません。」

そして数日後には早くも西条が美神事務所を訪れ香港の一件を報告していたが、ゾンビはともかく勘九郎は香港警察やGS達では手に負えず犠牲者を出すだけになってしまい香港当局は対応に苦慮していた。

勘九郎と警察が激突したのは昨日なのだが狭い土地に人口密度の高い香港の街中では香港警察やGS達が不利だったのだ。

しかも勘九郎はゾンビ達に一般市民を人質に取らせ暴れまわるものだから香港警察はGS達を集めてもほとんどまともに戦えずに終わっている。


「あの野郎……。」

「事が事だけに日本のGS協会にも応援要請が来たようだし、オカルトGメンも本部から精鋭部隊を出すか検討を始めた。」

あまりの勘九郎の暴挙に雪之丞はやり場のない怒りが込み上げて来てしまい、最早勘九郎が別の世界の存在になったことを改めて痛感していた。


「じゃあ、うちにも依頼来るかしら?」

「来ると思う。 僕にも本部から応援に回るよう通達が来た。 メドーサは違うが鎌田勘九郎は日本人だしね。 GS試験の時に取り逃がした故に日本のGS協会も協力しなくてはならないだろう。」

そして今後の対応だがすでに事態は動いていて、香港の当局から日本GS協会やオカルトGメンに協力要請が出ている関係で日本のGS達と西条は近日中に香港に渡ることになりそうだった。


「小竜姫様、どうする?」

「来たら受けて構いませんよ。 勘九郎の身柄を香港の当局に引き渡せばいいのでしょう?」

「そうですね。 メドーサは確認されてませんので。」

「ならばそれで構いませんよ。 メドーサはどのみち捕らえるのは無理でしょうから。」

美神事務所に関してはすでに小竜姫から依頼を受けている関係で令子は流石に対応を小竜姫に委ねるが、小竜姫は目的が同じならばGS協会からの依頼が来れば受けてもいいと告げた。

厳密に言えば二重依頼になるが神族である小竜姫の依頼は表沙汰には出来ぬ依頼であり、肝心の小竜姫がいいと言うならば令子が拒否する理由はない。

報酬がまた増えるのでホクホク顔の令子に西条は若干引いていたが、それはともかくとして香港を舞台に役者が揃いつつあった。


「クッ、今の俺だと勘九郎に勝てるかどうか。」

「向こうはほとんど人間捨ててるしね。 そう簡単に行かないわよ。 目の前で勘九郎に人質取られたら流石にお手上げだもの。 それともアンタも人間捨てるか、小竜姫様に横島君並の力を貸してもらう?」

「俺は自分の力で勝ちたいし、人間捨てる気もねえ。 ママに誇れる男になりたいんだ。」

「なら人として努力して戦うしかないわ。 別に強い奴が勝つわけじゃないもの。 生き残った方が勝ちって考え方もあるしね。 そもそも一度や二度戦ったくらいで勝ち負けなんてそうそう決まらないもんよ。 私だってそんな相手居るしね。」

一方雪之丞はあまりに早い勘九郎との対決を前に今の自分ではまだ勘九郎に勝てぬと悟り複雑そうな表情を浮かべていた。

ただ令子は相変わらず力で物事を考える脳筋な雪之丞に呆れつつ、雪之丞を試すと言うかたしなめるような言葉をかける。

どうも力と力の対決で決着を付けたがる雪之丞だが、人として生きる以上はそうそう決着がつくほどシンプルではない。

それに雪之丞は雪之丞で誇りと望みがあり、それは勘九郎とは似て非なるものだと理解するが故に令子は雪之丞に話して聞かせざるを得なかった。

厳密に言えば雪之丞は小竜姫の弟子であり令子は雇用主でしかないのだが、あまりに不器用過ぎる雪之丞についつい口出ししてしまうらしい。


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