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平和な日常~冬~3

「なんだ、やっぱり上手いんじゃん」

「でも慣れてないのは本当みたい。 動きが基本に忠実すぎるわ。 一夜漬けにしては上手過ぎるけど」

音楽に合わせるように踊り始める横島と木乃香の姿に美砂達を始め夕映やのどかもやっぱり横島はダンスも上手かったんだと口にするが、千鶴はそんな意見を否定するように慣れてないと言い切る。

実は横島のダンスはいわゆる基本に忠実なそのままだったのだ。

まあそれもそのはずで、横島はダンスの教材用のDVDをそのまま見てコピーするように覚えただけなのだから。

そもそもの問題として今の横島の能力は当然ながら人間のレベルではない。

一度見た動きをそのまま覚えて再現するくらいは朝飯前だった。

尤も麻帆良に来てからはどう考えても能力の無駄遣いしかしてないが。

ただ千鶴も言うように現状の横島では教科書のような型通りの動きしか出来ないのでそこは欠点である。



「緊張するわ~ 横島さんは平気そうやね」

そしてダンス未経験の横島と木乃香だったが、流石に木乃香も緊張の色が隠せない様子だった。

料理大会の観衆の前でもあまり緊張しなかった木乃香だが、やはり慣れてる料理と未経験のダンスでは違うらしい。

尤も木乃香に関しても本当に基礎的な動きはクラスメート達と事前に少しは練習して来ているのだが。

それでも高鳴る胸の鼓動は、木乃香が今まで感じたことがないほどの緊張感を与えている。


「俺も緊張してるって」

一方の横島は木乃香から見てさほど緊張してるようには見えないようだが、実際には横島もかなり緊張していた。

元々あまり女性に免疫がないし、かつての自分ならば誰にも相手にされずにへこむしかなかったのだろうなと思うとどうしても緊張してしまう。

加えて周りから集まる視線は流石に多く、いかに木乃香の未来が多くの人々を左右するかを横島は改めて感じていた。



「木乃香……」

そんな横島も感じているが、木乃香と横島は多くの視線を集め注目されている。

当然ながら母である穂乃香や祖父である近右衛門もその中に含まれており、木乃香と横島が最初に踊った意味の大きさを考えると共にこの先どうするべきか思案していく。

ただでさえ横島と木乃香は麻帆良祭以降は公認カップルのような認識を持たれることが多いのに、今回のように初めてのダンスパーティーで最初に踊ったのが横島だとなるとそれは更に拍車がかかるだろう。

今回のダンスパーティーは通常の社交界のダンスパーティーほど厳密なものではないが、それでも初参加の木乃香が横島と最初に踊ったインパクトは大きい。

特に木乃香が抱いてる感情が恋愛感情そのものであることは周りから見ると疑いようがないほどで、緊張気味に踊る二人は初々しいカップルにしか見えない。

正直近右衛門も穂乃香もここまで横島達が大きなインパクトを与えるとは思ってなかった。

実のところ誰が横島と最初に踊るかで少女達がずいぶん揉めた結果、木乃香に落ち着いたという経緯があり誰かが大きなインパクトを狙った訳ではないのだ。

昼間の斉木の件と同じく偶然の産物だが、横島が麻帆良と魔法協会の中枢に限りなく近い存在としてデビューしたのは確かである。


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