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その二

「美味しいですわ!」

西条の除霊を見物した横島とかおりはそのまま街をぶらつき、おやつにとスイーツが美味しいと評判の店に来ていた。

日曜の午後ということもあり店は行列が出来ていて入店までに三十分ほど並ぶことになったが、店内は九割が若い女性と客層が偏っており一割の男性は横島のような女性の連れのみなのでそこは女の園のようである。


「本当に美味いっすね。 今度妙神山にでも土産に持っていこうかな。」

貧乏でモテなかった横島には尤も縁遠い世界であり場違い感からか若干居心地が悪そうにしているが、かおりは一度来てみたかった店らしく素直に嬉しそうにはしゃいでいた。

ただスイーツ自体は本当に美味しく、横島はこんな世界もあるんだなと半ば感心したようにスイーツを食べながら今度妙神山に行くときの土産にしようかと思い付く。


「妙神山にケーキですか?」

「甘いものは小竜姫様とパピリオが喜ぶんっすよ。」

それは横島としてはごく普通のことであるが、かおりはそんな横島の言葉に美味しい物を食べてほころんでいた表情が少し真面目になる。

一般的に神族への供物は宗教によりある程度決まったものがあるが、実のところそれを神族が受けとることはまずあり得ないことだった。

かおりは一瞬仏教系の小竜姫にケーキなど捧げていいのかと疑問が浮かんだらしいが、横島の認識では供物ではなくお土産だと理解すると興味深げに横島の話を聞いていく。


「老師はゲームソフトとか持ってくと喜びますよ。」

「仏教関係者が聞くと卒倒しそうですわね。」

甘いものやらゲームソフトやら俗っぽいお土産を喜ぶ神族の姿に、かおりは少し前の自分ならば信じることが出来なかったかもしれないと思うと少し複雑な心境になる。


「人によってはお金とか金銭的な価値のある物を持っていくみたいっすけど、正直あんまり使い道がないって言ってましたよ。 江戸時代に貰った小判がまだあるって言ってましたし。」

しかも妙神山には神族に会えるということで時々妙神山にお参りに行く人間が居てお金やら金銭的な価値のある物を持っていく人が居るらしいが、小竜姫的には貰っても倉の肥やしになるだけで正直嬉しい物ではないと暴露するとかおりは本来決して聞くことが出来ない神族の本音に唖然としてしまう。


「そうだ、来週の日曜にでも妙神山に行くつもりなんっすけど良かったら一緒にどうっすか?」

「私が行ってもいいのでしょうか? それにもし仮に行くにしても何を持っていくべきか。」

神族の予期せぬ本音に固まるかおりだが横島が再び妙神山に誘うと、迷いの表情を見せて行ってもいいのかや行くとしたら何を手土産に持っていくべきかと頭を悩ませる。

かおりとしては神族への礼儀をきちんとすべきだとも思うのだが、小竜姫があまり喜ばないのなら本末転倒になるのだ。


「ああ、そういや小竜姫様は女性が読むような本とか雑誌欲しがってましたね。 なんか持っていくなら本とかどうっすか?」

ただまあ横島としてはそこまで神族を意識してないので以前に小竜姫が興味を持っていた現代の普通の本なんかをお土産として勧めていた。

ぶっちゃけ横島では女性がどんな本を読むのかよくわからないので、ちょうどいいと思ったらしい。



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