「後悔してますか？　ＧＳになったこと」

複雑そうな魔鈴の問い掛けに、横島は少し苦笑いを浮かべる


「後悔ならたくさんありますよ。　俺は何も考えないで生きてましたから…　でも、もしやり直せるとしたらまたＧＳになりたいです」

横島のそんな偽らざる気持ちを聞いた魔鈴は、いつの間にか抱きしめていた

あまりに若く未熟だった横島は、その身に余るほどの運命と戦ったのだ

あれだけ辛く悲しい経験をしてもまたＧＳになりたいと言うその気持ちに、魔鈴は言葉に表せない感情を抑え切れない


「俺にとってＧＳは、絆だった気がするんっすよ。　魔鈴さんやルシオラやタマモやシロやパピリオ達とかみんなとの…　その絆だけは失いたくないんです」

魔鈴の温もりに包まれながら、横島は少し恥ずかしそうに自分にとってＧＳの意味を語っている

今の横島にとってＧＳ時代に出会った人々は、かけがえのない存在なのだ

後悔を上げたらキリがないが、ＧＳになった事は自体は後悔してなかった


「横島さん…」

その後感極まった魔鈴と横島は、言葉を交わす事無く再び愛し合っていく
　
　
この日、魔鈴はまた一つ横島の好きなところが増えていた



そして次の日、横島達はみんな揃ってＧＳ試験の会場に向かっている


「雪之丞さん。　いつも通りにやれば大丈夫です。　今のあなたなら、立派なＧＳになれますよ」

「手加減忘れるなよ。　前回ですらお前は強すぎたんだからな」

「熱くなっちゃダメよ。　熱くなれば、思わぬ事で痛い目を見るわ」

「雪之丞殿なら大丈夫でござる！　先生の次に強いでござるからな！」

会場に到着した魔鈴・横島・タマモ・シロは、試験に向かう雪之丞にそれぞれ言葉をかけていた


「ああ、行っくるぜ」

四人の言葉と笑顔に、雪之丞はふと柔らかな笑みを浮かべて試験会場に入っていく

いろいろ考えさせられる事があったのだが、横島達を見ていると今の自分は変わったのだと改めて実感していたのだ



「後はタイガーだな…」

雪之丞を見送った横島は、もう一人の友人であるタイガーを探して辺りを見回し始める


「あら、雪之丞はもう行ったみたいね」

しばらく外で待っていると、エミに連れられたタイガーがやって来た
　
　
「タイガー、気楽にな！　前は素人だった俺だって運だけで受かったんだ。　お前が普通にやれば受かるさ」

「横島さん、ありがとうですケン」

緊張気味のタイガーに横島は軽い口調で言葉をかけるが、相変わらず緊張気味のままだ

横島はそんなタイガーを見て、前回の様子を思い出す


（やっぱり前回より元気が無いな…）

前回も緊張していたタイガーだったが、前回は緊張しすぎて変なテンションだったのだ

それが今回のタイガーは落ち込み気味で元気がない


（やっぱり簡単に切替なんて無理だよな…）

魔理との関係や自分の能力に悩むタイガーの気持ちを、横島はなんとなく理解出来ていた

横島もまた、ルシオラへの想いを切替えろと言われても出来ないのだから…


「タイガーさん、後悔だけはしないように全力で戦って下さいね」

そして魔鈴もまた不器用なタイガーを心配していた

気持ちを切替えるのは無理でも全力を出して戦う事が出来れば、必ずや次に繋がるだろうと思う


「皆さん行って来ます」

雪之丞とは対照的に最後まで表情の固いままで、タイガーは試験会場に入って行った