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平和な日常~春~

その日の夜、2階のリビングには焼いたさんまの身をほぐした特製ご飯を食べる野良猫の姿があった

昼に飲ませた薬で体調はだいぶ回復したようだが、横島が大事をとって一晩2階に連れて来たらしい


「スゲーな、とても学園祭とは思えん」

ご飯をパクパクと食べる猫にホッとしたような笑みを浮かべる横島が見ているのは、麻帆良ケーブルテレビである

麻帆良ケーブルテレビは地域密着型のケーブルテレビであり、学園で行われたイベントや各種大会やサークル活動の中継などを中心に放送していた

そして最近は前年の麻帆良祭の特集を放送しており、今夜は前夜祭の様子を再放送していたのだ

世界樹前ステージをメイン会場に麻帆良市内各地で行われるイベントを生中継しながら繋ぐ形式の再放送だったが、その熱気や賑わいは見ているだけで楽しくなるようである


「みんなが騒ぐ訳だな~ お祭りのレベル越えてるし……」

「にゃ~」

半ば呆れたように前夜祭の放送を見ている横島だったが、野良猫はあまり楽しそうではなかった

麻帆良に急激に人が増える麻帆良祭は、野良猫達にとってはあまり嬉しいイベントではないらしい

悪戯しようとしたりする子供や何か意味不明な物が増える麻帆良祭は、危険な時期だと野良猫達は認識していたようだ


「そんなに危ないんなら庭に居ればいいよ。 俺の予定は分からんが、庭に人が入ることはないしな」

憂鬱そうな野良猫に困ったら庭に集まるように告げる横島だったが、それでも野良猫は不安そうである

環境の急激な変化や人間の行動を理解出来ないだけに不安になるらしい

結局横島はこの日は野良猫の世間話に付き合って夜を過ごすことになる



そして次の日の昼休み、麻帆良学園全中学・高校では各学校で定期テストのクラス別順位発表が行われていた

個々のテスト結果の詳細はホームルームに渡すためにまだ結果は知らされてないが、全体の発表は早々に行うらしい

各教室や講堂や食堂では生徒達がそわそわしながら結果を待つのだが……


「トップはやはり2ーFでしょうね」

「夕映賭けたの?」

「ええ食券を3枚ほど、 外れても惜しくない程度にしました」

そんな中、2ーAの教室でもクラス対抗の順位で盛り上がっていた

まあ2ーAのクラスは一年の頃から毎回最下位なので自分達の順位にあまり興味はなく、もっぱらトップを当てることに話が行っていたが

夕映は賭け事はあまり好きではないが興味本意で毎回少数の食券を賭けており、今回も少し賭けたようだ


「桜子、あんた今回はどこに賭けたの!?」

「今回はうちのクラスが最下位脱出に30枚賭けたよ。 そろそろ最下位脱出する気がしたんだ」

「えっ、それはいくらあんたでも無理じゃ……」

そして賭け事といえば麻帆良随一の強運と噂される桜子だったが、美砂や円を始め数名のクラスメートに囲まれ賭けた対象を問い詰められていた

毎回よく当てる桜子の対象に周囲は興味深々なのだが、今回桜子が賭けた2ーAの最下位脱出はあまりに無謀な気がしてしまう
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