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平和な日常~冬~2

「いよいよだな」

横島と木乃香達がそれぞれにスーツやパーティードレスに着替えて料理大会組の会場に戻ると、そこには同じく和服に着替えた茶道部の面々が揃っていた。

メンバーは女子中等部と大学部の茶道部の混合であり人数がかなり多いが、パーティー自体が長丁場になるので交代でお茶をたてる予定になっている。


「なんか茶道部のイベントみたいになっちゃったわね」

「別にスイーツが主役でなくていいのよ。 今回は全体の調和を一番考えたもの」

会場は和風な雰囲気や茶道部の面々からしてまるで茶道部のイベントみたいになったと茶道部の大学生は笑っているが、新堂はその完成度に満足げででありスイーツが主役でなくていいと言い切る。

わび・さびとまではいかなくても日本固有の美意識を生かしたもてなしを今回は考えており、あえてスイーツ単体が目立たぬように意識したのは新堂にとっては新しいチャレンジだったのかも知れない。

それはただ単にスイーツを振る舞うというよりは、いかに来てくれる人に楽しく有意義な時間を過ごして貰うことを考えての結果であり、横島や木乃香の価値観に強く影響されたと言える。

今までは常に今自分に出来る最高のスイーツを作り提供したいと考えて来た新堂にとって、いい意味でスイーツという枠に全く捕われない横島達に刺激を受けたのだろう。


「話には聞いてましたが、実際に会場を見ると凄いです」

「華やかなパーティーだからこそ、ホッとする空間は印象に残るでしょうね」

そして横島と一緒に着いて来た夕映と千鶴は会場の完成度に驚きつつも、それがどう評価されるのか楽しみなようだ。

華やかなパーティーにおいて和風のホッとするひと時を演出することは、印象に残すという意味では効果絶大だろう。

加えて本パーティーにおけるスイーツの役割の一つをよく考えた計画であることも確かだと二人は思う。

このクリスマスパーティーは本来は世代や立場を越えた親睦が目的であり、元々料理大会組の料理やスイーツもそれを盛り上げる一つの要素に過ぎない。

近年ではその高い技術力から将来にも影響する話などが持ち掛けられることも多いが、新堂と木乃香はそういった目当てが全くないので本来の目的に立ち戻ったとも言えた。


「本当に凄い人だよ。 おかげで今回は楽だったしな」

パーティードレス姿でただただ感心する夕映と千鶴に、横島と木乃香とのどかは新堂の凄さをシミジミと感じる。

特に今回横島は技術指導やアイデアを幾つか話した意外はほとんど何もしてなく、新堂が木乃香の意見や理想を聞きながら形にしてきたものであった。

最終的には木乃香の理想を色濃く形にした結果となったが、そこには新堂自身が横島のみならず木乃香からも学びたいと考えたからでもある。

後輩でありまだ経験不足の木乃香にとってはいろいろと学ぶことが多かったし、同じく新堂自身もいい意味で枠に捕われない横島達のやり方を学んでいた。

結果的に一石二鳥どころか一石三鳥とも一石四鳥とも言えるほど充実した期間であった。

横島達は新堂が何故天才だと言われるか理解した気がしている。



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