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平和な日常~冬~2

その後パーティーが始まる一時間半ほど前になると、横島達は新堂達と一緒にスイーツ作りを終えて会場入りをしていた。

会場の麻帆良ホテルは年季の入った重厚感溢れるホテルなのだが、この時ばかりは多くの学生達が最終準備の為に慌ただしく動き回っている。


「楽しみやわ~」

「そうだね」

会場に到着した一行は一端控室として割り当てられた部屋に入るが、流石にホテルを丸々貸し切っただけに一人一部屋とまで行かなくとも二人で一部屋は割り当てられていた。

木乃香とのどかはそれぞれにドレスの確認をしつつも、会場の熱気にワクワクとした気分を抑えられないようである。

実は同じ料理大会優勝組の中でも一番気楽なのは間違いなく木乃香だった。

他の優勝者達は超達を含めて基本的にはその場で料理を作りながら提供することもありこれからが本番と言えるが、木乃香達スイーツ組はすでに提供するスイーツを完成させてるので後は本番に顔見せをする程度でいいのだ。

しかも新堂との共同参加なので後は新堂に着いて挨拶をする程度でいい。

まあ他の優勝者のようにこのパーティーで自分をアピールするならばまた大変なのだろうが、木乃香にはそんな気持ちが全くないので本当に顔見せ程度のつもりである。

同じく新堂に関してはすでに自分の店もあり名も売れてる彼女はわざわざアピールする必要もないので、今回は楽しむことを優先させてるようだった。

実のところ本番でもスイーツ作りの実演をしようかとの案もあったが、最終的には手間や会場のスペースの関係で止めたなんて事情もある。



「こりゃまたお揃いで……」

一方横島の控室は人数の関係で一人で使うことになったが、横島が控室に入るとすぐに夕映と千鶴に加えて芦優太郎までが揃ってやって来ていた。

タバコに火を付けて一服でもと考えていた横島は予期せぬ組み合わせに驚きつつ彼女達を迎える。


「なんか飲むか?」

「今は結構です。 というか忙しいのです。 今のうちに打ち合わせをしないと」

割と忙しそうな夕映達を部屋に入れた横島は、今日はルームサービスやってるのかなと考えつつ何か飲むかといつもの調子で聞くが、夕映達はそれどころではないといった様子である。


「打ち合わせするほどのことあったか?」

何をそんなに真剣にといいたげな横島に夕映と千鶴は深いため息をはくが、元々横島はそんな人間なので騒ぐほどではない。


「麻帆良カレーと納涼祭と芦コーポレーションに関しては、最低限は顔を出して挨拶をしてもらわないとダメなのですよ」

横島自身は今回は新堂の存在もあり比較的楽だなと気楽な気分だったが、木乃香の師匠という立場に加えて麻帆良カレーの開発者・納涼祭の主催者・芦コーポレーションのオーナーという複雑の肩書きが重なっており実は全く楽ではないのだ。

横島本人は基本的には木乃香のサポートをしつつ途中少し抜けて一言二言挨拶をする程度でいいだろうと軽く考えていたが、今年の麻帆良である意味一番注目を集めた横島がそんな軽い扱いで済むはずがなかった。


「根回しはこちらでしましたので随分楽にはなりましたが、スケジュールはあるので従って下さいね」

横島の件に関しては千鶴の祖母がいろいろ根回しをしたようでスケジュール的にはキツイほどでもないが、流石に自由気ままに行動させるほど暇でもない。


「やばい、お腹が痛くなって来た……」

「子供かお前は」

「仮病は認めないです」

夕映達が来た目的を理解した横島はとっさにお腹が痛いと訴え苦しそうな様子を見せるが、夕映と千鶴は困った人だとしか見なく芦優太郎こと土偶羅にまで突っ込まれる始末である。

結局横島は必要最低限の挨拶周りをさせられるが、実は横島には逃げられたくないので事前に教えてなかったという裏事情もあったりする。



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