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ネギIN横島・異伝 麻帆良に現れた女王様

 東の空に一番星が輝くころ、横島の店では夕食の支度が調いつつあった。

 いつものメンバーが続々と帰ってきていて、店ではお客さんが途絶え少女たちで騒がしくなる。

「あれ? 雨?」

 ふと窓の外に視線が向いた明日菜の声に少女たちは驚く。ついさっきまでは雲一つない青空だったのだ。

「気付いているか?」

「ああ……」

 明日菜の背後にはいつの間にかアナスタシアと横島がいて、窓から外を見ている。その表情に夕映やあやかはただならぬ事態かもしれないと察した。

「なにかあるのですか?」

 聞きたいような聞きたくないような。非現実的なワクワク感と洒落で済まされない現実の一端を情報として知る夕映は、恐る恐る横島に尋ねた。

「自然に生まれた雷雲じゃないんだ。人為的、いや魔法的というべきかな」

 素直に教えてもらえると思わず驚く夕映が空を見上げると、確かにあり得ないほどの雷雲が瞬く間に空を覆っていた。

「でも、これは……時空振か?」

 誰に聞かせるわけでもなく、横島がそう呟いた瞬間、停電してしまい真っ暗になった店内に雷の光が一瞬だけ差し込む。

「キャッ!?」

 怯える少女もいる中、轟音がすぐに響く。

 音の大きさもさることながら、音と共に訪れた振動が店の窓を揺らし少女たちを恐れさせた。

「みんな、店から出るなよ!」

「葛葉刀子、チャチャチャゼロ。分かってるな?」

 その瞬間、横島とアナスタシアが一言残して店を飛び出した。

「ちょっと!?」

「ダメ! 神楽坂さん!」

 雷鳴がまだ鳴り響く中、それでも動ける明日菜がつい追いかけようとするも、刀子に止められる。

 刀子自身、なにがあったか理解してはいない。ただ、明らかに自然ではない雷を感じ、それが店の屋上に落ちたのだけは分かっている。

 魔法か? 敵襲か? どちらかと言えば、敵を警戒していた。


 外に出た横島とアナスタシアは人目も気にせず屋上に飛び上がる。ただ、その時、横島は禍々しい気配と懐かしい気配を感じていた。

「この腐れ魔族がぁぁ!」

 屋上が見えた瞬間、鞭のようにしなる神通棍が手負いの魔族を捕らえ滅ぼそうとしていた。

「美神さん?」

「……よこしま君!?」

 消滅する魔族から目を離さないまま横島とアナスタシアを警戒する美神令子。

 彼女の年恰好から換算すると、三十路だろう。かつてのような派手な格好はしておらず、年相応に落ち着いた服だ。

 横島と令子は互いに言葉が続かぬまま僅かな沈黙が支配する。

「貴様は厄介事を生み出す星の下に生まれたようだな」

 そんなふたりにめんどくさそうなアナスタシアはため息まじりに一言残すと、横島を置いて店に戻ってしまう。


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