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短編集パピリオ

『パピリオの極楽大作戦!?』


それは暑い夏の朝のことだった

クーラーなどある訳はない横島の部屋では、一人の少女が踏み台に乗りながら料理をしている

彼女の名前はパピリオ

自称横島の飼い主である


「ふふふ…… これを入れれば流石のポチも……」

不気味な笑みを浮かべるパピリオは、間違っても人間界には存在しないだろう得体の知れない何かをみそ汁に入れようとしていた

その目は真剣そのものであり、何処か覗きをしている時の横島の表情に似ているようにも見える


「朝っぱらから、何しとんじゃー!!」

パピリオが何かの物体をみそ汁に投入しようとしたところに何故か慌てた様子の横島が現れ、近くにあった雑誌でパピリオの頭にツッコミを入れていた


「うぐっ……主人の頭に何するんでちゅか! せっかくルシオラちゃんを早く復活させようと、ベスパちゃんに頼んで手に入れた魔界の発情薬を入れるとこだったのに……」

「前回どんな目にあったかもう忘れたんかー! 魔界や神界の食べ物は人間には合わんのじゃーー」

頭を叩かれて涙目で見上げるパピリオだが、横島は冷や汗を流しながら命の危機を阻止出来た安堵感に包まれている

よく分からないがパピリオが、妙な物を仕入れては横島に食べさせるのはよくあることらしい


「せっかくルシオラちゃんに早く合わせてあげようと思ったのに……」

「だから何度も説明しただろ? 俺とお前が子供なんか作ったらマズイんだって」

「細かいことは忘れろって横島が言ってたんでちゅよ!」

朝っぱらから口げんかをする二人だったが、これまたいつもの光景であり珍しくもない

さて何故こんなことになったかと言えば、ある日突然自分がルシオラを産むと言い横島の部屋に押しかけて来たのだ

そしてペットの面倒は自分が見ると言い張り、横島の部屋に居着いてしまったのである

しかしいくら横島でも見た目が子供のパピリオと子作りなど出来る訳がなく、なんとしても子作りさせようとするパピリオと阻止しようとする横島という奇妙な構図が出来上がっていた


「ポチはやっぱり私が嫌いなんでちゅね……」

「だから嫌いじゃないって。 もうちょっと大人になってからな!」

毎朝恒例の口げんかはパピリオが泣きそうになると終了する

横島が慌ててパピリオの機嫌を取り宥めていくのだ


「嫌いじゃないなら態度でみせるでちゅ」

涙を浮かべ拗ねた様子のパピリオは目を閉じるとそのまま横島を待つ

パピリオが何を期待してるかなど分かりきっている横島はいろいろな葛藤しつつも、そっとパピリオの唇に口づけをする


(もう一押しでちゅね。 おばちゃん達にポチは渡さないでちゅ)

その瞬間パピリオがニヤリと笑みを浮かべていたのだが、横島は気付かないようだ


「おっと、飯食って学校に行かんとな」

唇が離れると、横島はいろんな気持ちをごまかすかのように慌てて朝食を食べて学校に向かう

一方パピリオは一人横島の部屋で、お宝や昼ドラを見て人間を勉強していく

そしてそれがその日の夜の騒動の元になるのだが……

それはまたのお話で

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