その一

おキヌの勝利を横島達や令子は喜んで見ている


「おキヌちゃん勝ったな~。 まあ、ノスフェラトゥのゾンビを相手に戦ったんだし、当然の結果だな」

「はい、でも破魔札には驚きましたね」

横島と魔鈴は手を取り合って喜ぶ


「当たり前でしょう? 対人戦闘をするのに、ネクロマンサーの笛たけな訳無いじゃない!」

令子は自分の教えた成果だと言いたげに自信満々で話す


「破魔札を彼女に教えたのは俺達なんだが…」

横島は魔鈴にだけ聞こえるように呟く


「美神さんですからね」

魔鈴は相手にしても仕方ないといった感じだ


「さすがは令子ちゃんのとこの人だわ~」

理事長はマイペースでニコニコと感心していた


それから数試合消化して、お昼休みになる


理事長と令子は外で昼食を食べたが、横島と魔鈴は応接室を借りて昼食にした

周りを常に生徒達が囲んでおり、とてもご飯を食べれる状況では無かったのだ


「おキヌちゃんは、過去の時点より随分成長してるな」

横島は食後、魔鈴と先ほどの試合を思い出している


「はい、戦国時代に行って戦った経験だと思います。 私達と旅をして、ノスフゥラトゥ相手に戦いましたからね…」

おキヌの成長は横島や魔鈴の予想以上であった

素直なおキヌは、いい方向に導いてやると、成長はかなり早いようだ


そんな時、ドアをノックする音がする

コンコン…


「はい、どうぞ」

魔鈴が声をかけるとドアが開く


やって来たのは、おキヌと魔理とかおりの3人だ


「おキヌちゃん、決勝進出おめでとう」

横島が笑顔でおキヌに声をかける


「ありがとうございます! 横島さんと魔鈴さんのおかげです」

おキヌは嬉しそうにしているが、魔理とかおりは緊張から固まっている


「弓さんも一文字さんもおめでとうございます」

魔鈴が緊張している二人に声をかける


「はっ…はい! ありがとうございます!!」

魔理はガチガチに緊張して頭を深くさげる


「ありがとうございます」

弓は一見冷静に見えるが、緊張で言葉が出ない


「もう~、二人が横島さん達に会いたいって言うから来たのに、そんなに緊張しないで下さいよ」

おキヌは自分の後ろに隠れるようにしている、魔理とかおりに話しかける


「バカっ! そんなこと言うなよ」

「一文字さん、みっともない真似しないで下さい!」

魔理とかおりはおキヌの影に隠れて、言い争いをする


「まあまあ、皆さん座って下さい。 私が持って来た紅茶がありますから、飲んで落ち着いて下さい」

魔鈴は、緊張が解けない魔理やかおりに笑顔で、持参した紙コップに水筒から冷たい紅茶を入れて渡した


おキヌ達3人は並んで横島と魔鈴の向かいに座るが、魔理とかおりは相変わらず緊張した様子


「2人共リラックスしてくれよ」

横島は気軽に話すが、どう接していいか悩む


「あの…、一つ伺ってよろしいですか?」

最初に口を開いたのはかおりである


「ええ、私達で答えれることならば何でも聞いて下さいね」

魔鈴が優しく話すと、かおりは気を使いながらも話し出す

「魔鈴さんは現代で唯一の魔女だそうですが、具体的にはどんな魔法を使えるのですか?」

かおりは横島や魔鈴に聞きたいことがたくさんあるが

だが初対面な為、当たり障りの無い話から聞いていた


「基本的には、中世かそれ以前の白魔法と黒魔法が使えますよ。 元々は白魔女なのですが、戦う力が欲しくて失われた黒魔法も復元しました」

魔鈴は笑顔のまま、言える範囲で真実を教える


「戦う力ですか…?」

おキヌも初めて聞く話に興味があるようで、驚きながら呟く

令子ならともかく、魔鈴は強いが戦う力を求めるには違和感があった


魔鈴はそんなおキヌに優しく微笑む

「守る為の力が欲しかったのです。 大切な人の命と心を… 優しさだけでは救えないんですよ。 仲間や愛しい人と共に戦う力が無ければ、守れないこともあるんです」

魔鈴の言葉はおキヌ達の心に深く刻み込まれることになる

魔鈴の表情は優しい笑顔だが、それには過去の後悔も見えていた


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