その一

「横島君はどうかしら~」

理事長は魔鈴は答えたが、横島が無言なので改めて横島に聞いた


「俺はまだGSになったばかりですから… 何とも…」

横島は少し困ったように笑ってごまかした


「でも~、横島君も、もう立派なGSよ~ 生徒達と同じ年なんだし~ 意見を聞きたいわ~」

理事長は更に横島に意見を求めた

実は、理事長自身、横島の実力を計りかねていたのだ


原始風水盤や死津藻比女の事件で、横島が魔鈴と共に中心的活躍したのは知っていた

だが、わずか数ヶ月前まで霊能力の無かった横島が、実際どの程度の実力か予想出来なかった


理事長の探るような視線に、横島と魔鈴は気がついていた


「うーん、俺はなんとも言えませんが… あえて言えば、あまり実戦的でない戦い方をしてる人が多いですね。 この霊能バトルやGS試験を意識してるんでしょうが…」

横島は困ったような表情だが、当たり障りのないことを話した


「それは仕方ないのよ~ この霊能バトルの成績は、将来に影響するから~ それに、実戦を知らない子も多いわ~」

理事長は横島に痛いとこを突かれて、言い訳するように話していた


「基礎はやってるようですし、学校の授業としてはこの辺りが限界でしょうね」

魔鈴は理事長の意図に気がついて、話に加わった

横島があまり言い過ぎないように…


理事長は横島の発言を聞いて考えるが、やはり実力はわからなかった


一方、関わらないように話を聞いていた令子は静かに考えていた

(横島の奴、やっぱり変わったわね…)

横目でチラリと横島と魔鈴を見て、イラついていた


不自然なほど、突然実力をつけた

小竜姫が見いだしたのだから、ある程度は納得するが…

それにしても、異常な気がした


(まあ、いいか。 私には関係無いし)

令子はそう考えて、無視を続ける



そうしているうちに、一年の試合の番になった

初めは一年A組対一年B組


一年B組はおキヌと弓かおりと一文字魔理だった


試合は特殊な結界魔法陣の中で行われる

その中では物理攻撃が無効になる

あくまで、霊的パワーの勝負になるのだ


「一年の部第一試合! 一年A組対一年B組! それじゃあ行くでー!」


審判を勤めるのは、かつて六道冥子に負けた式神使い、鬼道だった


「おキヌちゃん頑張れー!」

令子は大きな声で応援した

令子の声に会場の生徒達はおキヌに視線が集まり、少し緊張した様子だった


「始め!!」

鬼道が声をあげて試合が始まる


「私が出るわ! いいこと、あなた方は……」

かおりはおキヌと魔理に出るな

と言いたかったが…


「先鋒行かせてもらうぜ!!」

魔理はかおりの隙をついて飛び出した


「お待ちなさい!!」

かおりは怒鳴るが魔理は聞かない


相手は仮面を被った藤代と言う生徒だった

「うぉらあああっ!!」


魔理は特攻服に木刀といった姿で、木刀で殴りかかった


「ファントムの仮面! 力を!!」

藤代はファントムの仮面の力を使った


ガキーン!!


ファントムの仮面で、一時的に霊力を強化した藤代は素手で防御して、木刀の一撃を防いだ


防がれた魔理はすぐに背後に周り、藤代を殴りとばした


「きゃあ!」

飛ばされた藤代に魔理は追撃を加える


「落ちな!」


魔理は威力は弱いが霊波砲で攻撃した


結界の端まで追い詰められた藤代に魔理はトドメに行った


「トドメだ!」

しかし、藤代が追い詰められた場所は敵の陣地だった


「バカ! 相手が交代するわよ!」

かおりは叫ぶが、すでに遅かった


藤代はニヤリと笑って交代した


交代したのは松本、着物を着て扇子で戦う生徒だった


「お馬鹿さん…、追い詰められたのはそっちの方よ」

松本は無防備だった魔理に扇子を使って攻撃をした


扇子からは衝撃波が出て、魔理を自分達の陣地まで追い詰めた

「ぐわっ!」


倒れた魔理を結界内から出して、かおりが交代した


「交代よ! 大人しくしてなさい!」

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