その一

横島は必死に理由を考えるが…

わからなかった


「忠夫さん…… 私の前に結婚式をしてたんですね……」

魔鈴は変わらぬ笑顔で横島にゆっくり話していた

横島は冷や汗が止まらないまま、魔鈴に言い訳するように続きを説明しだした


「いや… あれは貧乏神の呪いを中和する為にしかたなく… それに、その後美神さんもうっかり貧乏神を攻撃しちゃってさ~ 美神さんとも結婚式の真似事したしな… あくまで除霊の一部だよ…」


横島は魔鈴の機嫌を治そうと説明したつもりだが……


「そう…… 美神さんとも結婚式をしたのね……」

魔鈴の笑顔のプレッシャーが倍増した


(何故機嫌が悪くなるんだ? 本当の事説明しただけなのに…)

横島は鈍感な為、未だに理由がわからなかった…


一方魔鈴は…


(昔の忠夫さんじゃあ仕方無いのはわかりますが… なんか面白くないですね…)

魔鈴は真似事とはいえ、横島が自分より先に結婚式をあげたのが嫌だった…


それに令子と結婚式の真似事をしたのが余計に嫌だった


(あの美神さんが間違って貧乏神を攻撃するかしら…? 誰よりもお金が好きな人なのに… 相手が貧乏神なら、いつも以上に警戒するはずよね…)

魔鈴には令子が間違って、貧乏神を攻撃したのが理解出来なかった…


横島と小鳩に無意識で嫉妬したのでは…?

魔鈴はそう考えた


それに…

あの令子が、たとえ誰が不幸になろうと、貧乏神の影響下に自分から入る結婚をするだろうか…

それも疑問だった…


最終的に何が何でも貧乏神を退治するつもりなら、自分が結婚して中和する必要は無いだろ…


そこまで考えて魔鈴は気がついた

(もしかして美神さんは、私が予想したよりも前に、忠夫さんに惹かれてたのかもしれませんね…)

そう考えて、困ったように冷や汗をかいている横島を見た


(全く… この人は… 無意識に人を惹きつけてしまうんだから…)

魔鈴はそう考えて、ふとため息をついた…


相変わらずな横島に、魔鈴はゆっくり手を伸ばした…

そして、横島の体に手を回して……


自分から横島に強引に口づけをした!


いつもより激しい魔鈴のキスに横島は驚いたが…


横島も魔鈴を抱きしめてキスをかえした……


数分に及ぶ長く激しいキスが終わると、魔鈴はゆっくり離れて少し拗ねた様子で横島を見つめた…


「めぐみ…?」

横島は未だによく理解してない


「忠夫さん… 私… 悔しいです… 私はキリスト教とは相反する魔女ですが… それでも私の前に真似事とはいえ、結婚式をあげてたなんて……」

魔鈴は拗ねたまま横島に言った


「めぐみ… あの… その… ごめん…」

横島はしどろもどろになって謝った


「忠夫さんが悪くないのはわかってます! でも… 納得いかないんです!」

魔鈴は拗ねた様子のまま、横島にしがみつくように抱きついた

横島はそんな魔鈴を優しく抱きしめて頭を撫でた


「ごめんな… めぐみ…」

横島は魔鈴をなでながら、不機嫌な理由をやっと理解して、苦笑いしていた


魔鈴は横島の優しさと温もりに包まれて、いつの間にか幸せそうに微笑んでいた…


しばらくして、魔鈴は少し申し訳なさそうに顔をあげた

「忠夫さん… ごめんなさい… 私、忠夫さんのこと信じてます。 でも、なんか面白く無かったんです…」

魔鈴は横島にタップリ甘えて落ち着いたら、自分が過去にヤキモチを焼いたことに少し申し訳なく思った


「気にするなよ? 立場が逆なら、俺も同じ気持ちになってたさ… めぐみが誰かと結婚式の真似をしてたら、悔しかっただろうしな…」


横島は自分が無神経だったな、と少し後悔していた


「忠夫さん…」

魔鈴は嬉しそうな顔ななり、再び横島に抱きついた



二人はそのまま寄り添うように今の幸せを実感していた


ちなみに、普段事務所に居る美衣は…


気を利かせて、異界の家の方に居た


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