その一

「小鳩… 考え直せ! わいは貧乏神や… 貧乏神とずっと一緒に居ないなんて間違ってる… 後2~3年すれば年季が開けて、小鳩なら必ず幸せになれる…」

貧乏神は最後まで小鳩に試練を受けさせるのに反対だった

確かに小鳩とずっと一緒に居たい…

だが、それ以上に小鳩に幸せになって欲しかった…


貧乏神が心配そうに小鳩を見つめている中……

小鳩は語りだした

「私は…… やっぱり貧ちゃんと一緒に居たい…… 家族じゃない? 貧ちゃんが消えて、お金に不自由しないからって幸せとは限らないわ。 貧乏でも今までのように楽しく生きたいの」

小鳩は優しく微笑んで貧乏神を見つめていた



「貧乏神… お前の負けだよ。 信じてやれよ…」

横島は二人の会話を聞いて優しく話した


「そうですよ? 小鳩さんは必ず試練に打ち勝てます… どんな人間より純粋ですから…」

魔鈴も優しく微笑んで二人を見ていた



「わかった… この中に入れ… 小鳩… 必ず試練に勝てよ。」

貧乏神は優しく笑って、超空間の入り口を開いて小鳩に見せた…


「うん… 行ってくるね。 貧ちゃん」

小鳩は嬉しそうに微笑んだ


「小鳩ちゃん、自分を信じてな。 君は間違ってない。」

「そうですよ。 自分の気持ちに素直になれば大丈夫ですよ」

横島と魔鈴は最後に声をかけた


小鳩は頷いて、超空間の中に入っていった…


貧乏神は不安そうに超空間を見ていた


「あんさん達は試練の内容しっとるんか?」

貧乏神は横島と魔鈴をみて聞いた


「知ってますよ。 ですから、私達は信じてます。」

魔鈴は笑顔で貧乏神に話した


「貧乏神にとりつかれた人間が、金欲を捨てることが出来ると思うか?」

貧乏神は小鳩を信じてはいた

だが、お金を嫌いな人間は居ない…

貧乏神はそれをよく理解していた


「人間は金欲は捨てれないさ。 だが、もっと大切なモノがあるからな… 小鳩ちゃんはそれを理解してる… 凄い子だよ」

未来で小鳩を知る横島は小鳩の凄さをよく理解していた



一方小鳩は…


目が覚めるとそこは不思議な空間だった…

窓と扉が二つあった

それは、試練の出口のドアである

裕福のドアと赤貧のドア…

どちらかを開けたら試練が終わる

試練に打ち勝つには赤貧のドアを開けなければならない

金欲を捨てることが出来た人だけが、貧乏神の呪いから解放されるのだ…



「私… ここで何してたのかしら?」

小鳩は首を傾げながら窓から中を覗いた…


中では小鳩が一人で食事をしてる

見たこともない豪華な部屋で、美味しそうな料理を食べていた

「美味しいわ… こんな素晴らしい料理を食べれて幸せね…」

中の小鳩はとても幸せそうに微笑んでいた


小鳩は不思議そうに首を傾げて、もう一つの窓から中を見た


そこは小鳩のアパートだった


ちなみにこの時、小鳩はまだ横島のアパートの隣には引っ越してない…


窓から見えた部屋では、寝たきりの母親と貧乏神と小鳩が、ご飯も満足に食べれなくてグッタリしていた…


「小鳩… ご飯食べたいわね…」

病気の母は苦しそうに話した

「ごめんなさい。 母さん、もうお米が無いの…」

中の小鳩は申し訳無さそうに謝った


「すまんな… わいがずっと取り憑いてるばっかりに…」

貧乏神は小鳩と母親に謝った



小鳩はそんな窓の中と、さっきの窓の中を両方見比べて考えていた


「何で私が二人中にいるの…?」

小鳩は首を傾げて考えるが…

答えは見つからない


「とりあえず、母さんと貧ちゃんのご飯を何とかしなくっちゃね…」

小鳩は疑問が解決しなかったが、二人が心配だった為……


赤貧のドアを開けた!



その時…

財布の形をした超空間が開いて小鳩が出て来た

「きゃっ!!」


小鳩は驚いて辺りを見回していた


貧乏神はその瞬間光り輝いた!


ぽんっ!!


ラテンのような姿をした貧乏神の姿が、福の神の姿に変わった!!


「やったで小鳩! わいは生まれ変わった!!」

元貧乏神は嬉しそうに小鳩に駆け寄った

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