その一

「本当に音が出たわ…」

令子は驚きおキヌを見つめていた


(私は幽霊だった… 私には私にしかわからないことがある…)


おキヌは幽霊達の悲しみや怒りなど…

その想いを優しく癒やすように笛を吹いていた


「すごいわ… 音が霊波に変換されていく…」

令子が呟いた時…


おキヌは笛から口を離した


「美神さん、どうでしょう… 一応音は出ましたけど…」

おキヌは不安そうに令子に聞いた


おキヌは知らなかった

ネクロマンサーの笛が使えない人は全く音が出ない事実に…


音は当たり前に出ると思っていたおキヌは、ネクロマンサーの笛を使えたのを理解してなかった…


令子は驚きから戻ってきて、笑顔でおキヌを抱きしめた


「すごいわ! おキヌちゃん… まさかすぐに音が出るなんて… しかも音が霊波に変換されていたわ」

令子は自分のことのように喜んでいた


「それじゃあ… 私にこの笛が使えたんですか?」

おキヌは不思議そうに話した


「ええ! あなたはネクロマンサーの笛を使っていたわ… 私にはそれ以上詳しくわからないけど、でもあなたはネクロマンサーになれるわ」


令子はおキヌに自信を持って話した


「私がネクロマンサー…」

おキヌは不思議な気持ちだった

お札しか使ったことがないのに…

自分が世界で3人しか居ないネクロマンサーになれるなんて……


「ネクロマンサーは霊をコントロール出来るわ… 優しく成仏させるのも出来るし、多くの霊や人を救えるわ…」

令子は優しくおキヌに説明した


「私… 頑張ります! 美神さんや横島さんみたいになれるように……」

おキヌの目にはやる気が満ちていた


幽霊だった自分を救ってくれた、令子や横島のようなGSになりたかった……


「おキヌちゃんなら大丈夫よ… おキヌちゃんなら素晴らしいGSになれるわ…」


令子は本心からそう思っていた


令子もまた、おキヌの優しさに救われていた


おキヌの優しさなら、自分とは違うが…

素晴らしいGSになれる

そう思った



おキヌはその日夜遅くまで

夜空を見上げながらネクロマンサーの笛を大切そうに抱えていた


「横島さん… 私、頑張ります。 あなたにもらったこの笛で…… そしていつか… あなたの助けになりたい…」

おキヌは一人静かに呟いた


横島には魔鈴が居る…

二人の固い絆は戦国時代で知った


自分の気持ちが横島に伝わることは無いだろう…

おキヌはそう思った……


それでも…


せめて仲間として、横島の助けになりたい


そう……

強く願った…




次の日…


横島と魔鈴は銀座に来ていた

「なんか… いつ来ても、場違いな街だな…」

横島は慣れない街と高級そうな店の連続に気が引けていた


「ダメですよ。 今日は審査員の時着ていく服を買うんですから…」

魔鈴は横島の腕を組み笑顔で話した


久しぶりに二人でショッピングに来て、魔鈴は機嫌が良かった…


横島はラフな格好をしているし、魔鈴はワンピースを来ていて、周りに金持ちそうな人々が多い銀座では多少浮いていた…


「いつもの除霊の時のスーツでいいと思うんだが…」

横島は不思議そうに魔鈴を見た

わざわざ銀座に服を買いに来る意味が、理解出来なかったのだ…


「ダメですよ! 私達は有名人なんですから… 恥ずかしくない姿で行かないと!」

魔鈴は笑顔でニッコリと話したが…

横島の拒否は受け付けそうも無かった


横島と言う男は、未だに貧乏性と言うか…

お金に執着が少なかった…


魔鈴はそんな横島を好きだったが…

たまには二人でお金を気にしないで、ショッピングをしたかった…


それに…

行くのが六道女学院だと言う理由もあった


あそこの霊能科の生徒の大半が親もGS関係だ…

あそこでの評判はGS業界にすぐに広がるのだ

現在、魔鈴と横島は映画の影響で、憧れのGSのベスト5に入っていた…


そんな自分達が恥ずかしい姿では行けなかった…


もっとも…

横島に憧れる生徒達に、自分と横島の幸せを見せたい……

との小さな野心もあったが…


横島に近づく女を減らす為に……

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