その一

タマモがいなり寿司をチラチラ見ながら葛藤すること数分…

(しょうがないわね… 力を取り戻さないと何も出来ないしね…)

タマモは自分に言い訳をするように考えて、いなり寿司に近づいた


クンクン…

(どうやら毒はないようだ…)

タマモは匂いを嗅いでみたが、美味しそうな匂いしかしなかった


周りやドアをキョロキョロ見て、誰も来ないのを確認してからやっと一口食べた

パク…

モグモグ…

ゴックン…


タマモの表情が一瞬で変わった!

(美味しい…)


そして、次々にいなり寿司にかぶりついた


パクパク…

モグモグ…

パクパク…

モグモグ…


皿にあったいなり寿司は20個はあったろうか…


あっと言う間にタマモのお腹に消えていた…


タマモは美味しい物をお腹いっぱい食べて、幸せな気分に浸っていた…



そんなタマモの様子を横島と魔鈴は実は見ていた…

タマモの部屋には小さな隠しカメラがあったのだ


「おっ… 食べてるな~ 腹減ってたんだな…」
 
横島は安心したように呟いた

「ええ、復活していきなり知らない場所に連れて来られて、かなり不安だったみたいですが… やっと食べてくれましたね」

魔鈴は嬉しそうな話した



一方タマモは…


お腹がいっぱいになり自分の現状を考えだしていた

(わざわざ私を復活させたのよね… 何か利用するつもりかしら? 退治するならもうやってるだろうし…)

タマモは子狐のまま考えていた


しばらく警戒しながら考えていたが…

復活したばかりのタマモは霊力も体力もあまり無かった

お腹いっぱいになったタマモはいつの間にか眠っていた…


タマモが目を覚ましたのは次の日だった

キョロキョロ…


周りを見回したが特に昨日と変わりなかった


コンコン…

その時部屋のドアが開いた

タマモは警戒しながら見つめる


入ってきたのは横島と魔鈴だった…


「よっ! 体調はどうだ?」

横島は笑顔で子狐のタマモに話しかけた

「ちょっと話したいの… 変化してくれる?」

魔鈴は優しく話した


タマモは横島と魔鈴の顔をじっと見つめて考えていた…

(私を復活させたやつね… いよいよ目的がわかるわね)

タマモは警戒したまま変化した


その姿は中学生くらいの女の子

未来でよく知る姿だった…


「何で私を復活させたの? 目的は何?」

タマモは横島と魔鈴を見つめて静かに聞いた


「俺達はお前を助けたかったんだよ。 まあ信じないだろうがな…」

横島は苦笑いして答えた

「あなたはもう少しで復活するところだったわ。 でもあなたは見張られていたのよ… あのままじゃ、生まれてすぐに人間に狙われるわ。 私達はその前に助けたかったの」

魔鈴は優しく微笑み話した


「……」

タマモは答えない

静かに考えていた…

狙われるのは理解していた

たまに霊能者が来ていたから…

だが…

彼らが助ける理由は、わからなかった


「で… 私をどうするつもり?」

タマモは横島達の出方を探るように聞いた

「どうもしないよ… この部屋はお前の部屋だ。 あっちに、異界のこの家と人間界を繋ぐゲートがある… 出入りは自由にしてくれ」

横島は普通にタマモに説明した


「あなたにはしばらくここに住んで欲しいの。 もちろん行動は自由よ。 ご飯も出すわ。」

魔鈴がタマモ言うとタマモは不思議そうにしていた

「何を言ってるの? 自由にしたら逃げるわよ!」

タマモは横島達を睨むように話した

横島と魔鈴は困ったような顔になった


「まあ、そう怒るなって… お前が眠っている間に人間社会は変わったんだ。 しばらくここで勉強しろよ。 三食お揚げ付きだ」

横島はニコニコと話していた


「あなたが知りたいことは、いずれ教えるわ… 今言えるのは私達は敵じゃないってこと…」

魔鈴は警戒を解かないタマモに少し寂しそうに話した


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