その一

タマモはしばらく前から意識があった


殺生石の中からは出られないが、付近の様子は見えていた


たまに霊能者らしき人間が、様子を見に来ていたのは知っていた


だが、今日は違った

凄まじい力を持つ人間…、らしき人が来た

(何者…? あの力は神魔クラスはあるわ… でも感じるのは霊力… もう少しでやっと外に出られるのに、私を殺しに来たの?)

タマモは殺生石の中で動けない

横島達の力を見て覚悟を決めた


しかし…

その人間は殺生石に霊力を分け与え始めた


(馬鹿な…! 人間の霊力なんてすぐに吸い取ってしまうわ! 死ぬわよ!)

タマモは力は凄いが相手が人間だと思った

そして予想外の行動に慌てていた


タマモが慌てる中…


横島達は順調に霊力を送っていた

(力が溢れてくる… 復活するわ! でも彼らは私をどうするつもりかしら…)

タマモは復活の喜びと、見知らぬ横島達の不安が入り混じっていた


そして、光と共に…

タマモは意識を失った




横島と魔鈴は目の前に眠る子狐を見た


そして、魔鈴が優しく抱きかかえた

「どうやら無事に復活したみたいね…」

魔鈴は嬉しそうに話した

「うむ、じきに意識が戻るじゃろ…」

カオスはタマモの様子を見て話した

そして、懐から一枚の吸引のお札を出した

「カオスどうするんだ?」

横島はカオスの行動が読めずに不思議そうに見た

「殺生石に違う妖怪を封印するんじゃよ… この札には、先日封印したコンプレックスが入っている。 こいつをダミーにするんじゃ」

カオスは自信満々に話した


「なるほど… 中に何かが封印されてるのは、霊能者ならわかるが、何が封印されてるかはわからないからな…」

横島は感心したように話した

「うむ、コンプレックスは最近増えてきた低級妖怪じゃからな… ダミーにはピッタリじゃよ」

カオスは悪い笑みをニヤリとして、殺生石に封印の準備をする始めた


そして、あっと言う間に殺生石にコンプレックスを封印してしまった


「これで、ここを管理しとる連中も気づかんじゃろ… こやつが復活するのは数百年先…その時の連中の驚く顔が目に浮かぶわい」


カオスは嬉しそうに話した


「殺生石にわざわざ、コンプレックスを封印する人がいるなど考えないですからね…」

魔鈴はイタズラが成功した子供のような笑顔の、カオスを見て苦笑いしていた


「じゃあ、誰かに見つかる前に戻るか」

横島は文珠を作った

そして文字を込める

【転】【移】


魔鈴、カオス、マリアを連れて横島は事務所まで転移して帰った…



「……」

タマモが目を覚ましたらそこは不思議な家だった…


窓から見える景色は見たこともない不思議な景色…


「クーン…」

タマモは部屋の中を見るが誰も居ない

自分はベッドに寝かされていた

(まだ変化出来ないわね… 復活したばかりだもんね)

タマモはこれからどうするか考えていた

彼らは何故自分を復活させたのか…

そして、これからどうなるのか…

不安の中でタマモは考えていた


コンコン…

ドアをノックする音がする

タマモはとっさに寝たふりをした


ガチャリ…
 
ドアが開くと魔鈴が入ってきた

そして魔鈴は、テーブルにいなり寿司を置いた

「起きたら食べてね」

魔鈴は眠るふりをしているタマモに、そう話すと再び部屋を出た


タマモは魔鈴の気配が消えると目を開けた

(私は捕まったんじゃないの?)

自分の状況を把握するべくタマモは考えていたが…

ふと見ると…

テーブルの上には、美味しそうないなり寿司がたくさんあった


美味しそうないなり寿司にタマモの目は釘付けになる…

(騙されてはだめよ! あれは罠よ!)

タマモは必死に自分に言い聞かせるが…

目線はいなり寿司から離れない…

顔には苦悩が満ちていた


グ~

生まれたてのタマモはお腹が空いていた…

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