その一

魔鈴は静かに横島の隣に立ち横島の怒りを静めた

少し前の殺気が嘘のように優しい目に戻った

魔鈴はゆっくり令子を見た

「美神さん、ここの妖怪は説得が終了しました。 私達が保護しました。 仕事は終わりです。 お帰り下さい。」

魔鈴は静かに話した

その顔に笑顔は無く、魔鈴も心の底では怒りを感じていた


「わかったわ…」


令子は魔鈴の出現にやっと冷静になり、何も話さずにGメンの職員を連れて帰っていった



令子達が居なくなると家からミイとケイが出てきた


「大丈夫だったか?」


横島は悲しそうにしながらも、笑顔を作りミイとケイに話しかけた

「はい、ありがとうございました。」

「兄ちゃん、ありがとう!」


ミイもケイも横島と令子の戦いを見ていたので理解した、自分達を守るために戦った事実を…


「家をめちゃくちゃにしてすいませんでした… まさかいきなり攻撃してくるとは…」

横島と魔鈴は頭を下げた

「頭を上げて下さい! もしあなた方が来るのが後少し遅かったら私達は殺されていたでしょう… 謝られる必要は無いですし、お礼を言うのはこちらです。」

ミイは困惑していた

横島は自分達を守ったのになぜ謝るのか…?


「ミイさん、ケイちゃん、この状態ではもう住めないでしょう。 しばらくは私の家に来ませんか? 私の家は幸い広さがあるので、この先をゆっくり考えればいいと思うのですが…」


魔鈴はミイに提案した

ミイ達の家はあちこち壊れて、雨でも降れば住める状態では無かった


「本当によろしいんですか…?」

ミイは横島と魔鈴を見て伺うように話した


「ああ、二人は俺達が保護したと報告する。 そうすればもう安全だ。 しばらくは家に来てくれたら助かる」


横島は笑顔に戻り話した


結局、ミイとケイは魔鈴の事務所に住むことになった


横島達はその日のうちにミイとケイの荷物を纏めて、文珠で事務所に送った


そうしてミイとケイは事務所の上に住むことになった


平日はミイに事務所の事務を頼み給料も払った

これにより、ミイとケイがいつ自立しても大丈夫だろうと横島達は考えた

ミイが事務所の事務員をしたのは本当に助かった

今まで魔鈴かマリアが事務所に居て電話番などをしていたが、これで魔鈴もマリアも自由に行動出来る


いろいろ秘密の多い横島達には、ミイはうってつけの人材だった…



横島が令子と戦った次の日

西条がGメンとして正式に謝罪に訪れた


GS協会の仕事中のGSを、確認もせずに攻撃を仕掛けたのはどう考えてもGメンに不利だった


出来たばかりのGメンがGS協会と争う訳にもいかず、西条はあちこに謝罪に回っていた


なぜこんなに迅速に謝罪に回ったかと言えば、横島と魔鈴は今話題のGSだからである

香港の映画で人気が出ており、GS協会も評価が高い

今やオカルト業界のイメージアップに貢献していた


先日横島の学校の生活模様が放送された。


妖怪や人間が仲良く学校生活を送っていた

その事実にオカルト業界も一般人も強い衝撃を受けていた


人と妖怪の共存

そんな理想を掲げる人間達が注目を集めている現在

横島と魔鈴が妖怪を説得して保護しようとしたのをGメンが攻撃して妨害したとなれば、令子一人の問題では無かった


相手を確認せずに人間を攻撃しただけでGS免許取り消しなのに、そんな事実が発覚すれば

Gメンは向こう10年は日本で仕事が出来なくなる


万が一、告訴されたらスキャンダルでは済まなくなる


たった一晩でそこまで判断したのは、さすがの西条といったところだろう


横島達は結局
Gメンの謝罪を受け入れた

アシュタロス戦前に、Gメンと西条に貸しを作った方が得だからである


令子はアルバイト職員として働いていた為

責任がとるのは西条になるようだった


西条は横島と魔鈴がかなり怒っているのを予想したため

あっさりと謝罪を受け入れた事に安堵していた


「本当に済まなかった。」

西条は朝から何度かわからないくらい謝っていた

「過ぎたことはいいですよ。 GメンとGSはこれからも協力していかなければなりませんし…」

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