その一

さっきまで横に居て警戒していたはずの横島が勘九朗の目の前に居た

そして横島の霊波刀は勘九朗の霊的中枢を正確に貫いていた…


「勘九朗… 最後までお前にチャンスを与えた雪之丞の気持ちわからないのか? 人間も魔族も同じ命だろ…、雪之丞が勘九朗というかつての仲間に対しての気持ちを… 人間でも魔族でもやり直しは出来るんだ……」


横島は悲しそうな顔で勘九朗に話した


「人間も魔族も同じか…… 横島…忠夫…… あなたは不思議な人ね… もし…GS試験の時、あなたと戦ったのが私だったら…… 雪之丞…… 先に行ってるわ… 来世で会いましょう……」


勘九朗は途切れ途切れだがそう話して消えていった

死体も残らないその死に方は魔族としての最後だった


雪之丞は険しく悲しい顔をしていた…


「横島君、雪之丞君、勘九朗君には最後の最後で君達の気持ちが届いたみたいだね…」

唐巣はそう話して祈りを捧げた

隣に来たピートも同じく祈りを捧げる


そして横島達は風水盤の場所へ行き、カオス達が風水盤を解体するのを待って洞窟を脱出した


場所が変わって、ホテルのレストランで一行は食事をしていた


「勘九朗君は死の直前まで強さという魔物から抜けれなかったんだね…」

「魔族や妖怪になることで強くはなれませんよ… それはバンパイアハーフの僕にはよくわかります」

唐巣とピートはそう話して不器用な生き方しか出来なかった勘九朗を考えた


そんな中、ピートと雪之丞には横島が話した

魔族も人間も同じ命でやり直しが出来る…

その言葉が響いていた


カオスは静かに食事をして、横島と魔鈴はお互いを思いやるように微笑みながら食事をしていた


一方令子は複雑そうな顔で機嫌が悪かった

目の前で横島達の甘い世界を見せつけられていたし

今回の事件で横島の実力を改めて知った為だった


前の死津喪比女の時にも感じたが、改めて横島の力を見て気がついた

戦闘力では自分と同等以上かもしれない…


わずか数ヶ月前まではスケベで役に立たないただの荷物持ちだったのに…

その成長速度に恐れを抱いた自分がまた嫌だった

自分は美神令子だ!

そのプライドでそんな自分に活を入れて自分もより強くならなければ…

そう考えていた


だがそれでも心にある違和感、その理由は本人は気がつかなかったが


自分の事務所の最初から居た丁稚の男…

バカでスケベでどうしょうもないやつだったが、なんか憎めなくずっと側にいた男…

その男が成長して立派になった

しかしその隣にいるのは自分ではない

その違和感が苛立ちになっていた

人はそれを嫉妬と言う…

が……意地っ張りな令子はそれを認めることは無いだろう…

失った者を追いかけることの出来る性格ではなかった


そんな令子の様子を複雑そうな表情で見ていたのは唐巣だった…

唐巣には自分の教え子が悩み苦しんでいる内容が予想出来た

だがその性格も知っているため、どうすることも出来ないのも理解していたからだった



そんなそれぞれの思惑がありつつ


元始風水盤事件は解決したのだった…



それから小竜姫は一足先に瞬間移動で帰り、カオスとマリアも早々と飛行機で帰った


数日後、残りのメンバーには香港で映画出演の話が来ていた前回散々危ない事をさせられた上、スタントシーン以外は撮り直しをされた横島は無論参加を拒んだ…


だが監督がリアリティを追求したいからと、再三横島に頭を下げた

結局横島は監督に根負けして出演を承諾した

どうせスタントシーン以外は撮り直しだと思って……

そして今回は主演女優の白麗と最後に入れ替わるのが、令子ではなく魔鈴になっていた

白麗はその為に髪を魔鈴に合わせて染めたようだった

理由は定かではないが監督が気に入ったらしい…

令子は今回は悪の組織の幹部の役で、それが似合いすぎて好評だったのは予想通りだろう

撮影自体は一週間で終わり横島達は日本に帰った


しかし横島は気がついていなかった…

今の横島は昔と違って、落ち着きがあり魅力的な人間になっているのを……


映画は横島のシーンはそのまま使われて、いつの間にか主演俳優にされていた

映画はアジアで大好評で日本でも話題になり、特に横島と魔鈴の元には映画やドラマのオファーがたくさん来ることになるのは


もう少し先の話である…
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