その三

次の日の夜、魔鈴事務所には銀一が訪ねて来ていた

撮影の合間を縫ってやって来たらしく、少し疲れた表情をしているが全体的には元気そうである


「横っち、この前はすまんかったな。 でもおかげで踊るGSのドラマは今までに無いくらいうまくいっとるで」

大阪で偶然横島と再会して以来、銀一は一度東京の横島の元に顔を出そうとしていたが時間がなかなか取れずに今日来たらしい


「気にしないでいいよ。 俺も助けてもらったしな。 銀ちゃんこそ大変だろ?」

「俺は忙しいのには慣れてるから大丈夫や」

久しぶりにゆっくり話せる事を喜ぶ横島と銀一は、小学生の時に銀一が転校してからの出来事を互いに語っていく


「お互い大人になったな~ 一緒にスカートめくりしてた俺と横っちが、芸能人とGSになるとは思わんかったわ」

予期せぬタイミングでの再会だったが、それ以上にお互いに予想もしない形での再会だった

横島のGSも意外だが、銀一の芸能人も予想外である

まあお互いに子供だったのでそれが当然だが、横島も銀一も子供の頃夢見た将来とは違うようだった


「俺は偶然と言うか必然と言うか難しいとこだけどな~ GSに成りたいなんて考えた事なかったし……」

銀一の話に横島は子供の頃を思い出すが、まさかこんな未来になるとは予想出来るはずもない


(とんでもない経験はたくさんしたけど、人生やり直すとはさすがに思わんかったな)

昔を思い出していくうちに未来での高校生活や令子とのGS体験も思い出す横島だったが、正直複雑な気分だった

あの当時は何も考えてなかったが、かつて犠牲にした普通の高校生活は横島が思ってた以上に楽しく充実したものだったのだから


(まあ、ルシオラ達の件やタマモやシロの件とかもあるからGSに成らない未来は考えられないんだよな~)

結局GSという仕事はあまり好きじゃない横島だが、オカルトから離れる事は出来ないと自分で思う

未来でアシュタロス戦から10年が過ぎて、GSを辞めてからも9年になる

その間は横島自身はGSではないのだが、ルシオラの復活や友人達との交流により間接的にはオカルトから離れられなかった


(俺は俺の好きなようにやるだけか)

9年の月日が過ぎた横島は、オカルトや過去と向き合えるようになっている


その結果、結局自分の好きなようにやるしかないというのが今の横島の考えだった



その頃魔鈴とタマモ達は、自宅で横島と銀一の事を密かに見守っていた

魔鈴達はこの時代では銀一との面識が無いだけに、今回は顔見せの挨拶だけで終わっている

未来では友人だったのでまた友人になれるだろうが、さすがに一から関係を作るのは簡単ではない

今回は久しぶりに再会した横島と銀一を二人にしていた


「やっぱり若いわね」

「若いと言うより幼い感じでござるな」

過去に来て初めて銀一と直接会ったタマモとシロは、僅か数年でもその印象がかなり違うようだ


「仕方ないですよ。 人間は寿命が短い分、成長速度は早いですからね」

今までも過去に来て感じたが、10年の時間は想像以上に魔鈴やタマモ達に違和感を与えていた

仲のよかった人の昔の姿は、やはり不思議なようである


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