その二
頭の回転の速さや行動力が目立つ百合子だったが、カオスが一番感じたのは根本的な感性が常人とは全く違っていた事である
一流の霊能者は霊感が働くのと同じように、百合子にも常人には無い感性があったのだ
ただ有能なだけの人間なら星の数ほど居るが、百合子が半ば伝説となるほどの実績を上げた根本にはそのような感性が働いていたとカオスは見てる
(惜しむべくは若さゆえの未熟さじゃのう)
そしてカオスにはそんな百合子の弱点が見えていた
ある意味天才型の人間の特有の弱点とも言えるが、百合子には出来ない人間の気持ちがわからない
人には無い感性がある代わりに、人にある感性が何処か欠けているのだ
まあそれは歳を重ねて様々な経験を積めば理解出来ていくのだが、百合子は若くして大樹と結婚して引退したために経験不足が否めない
(出来の悪い息子を愛するがゆえに、その目が曇るか……)
かつて百合子が令子に対しての判断を間違ったように、中途半端な感性と自信が時として百合子の足を引っ張る
カオスから見れば百合子はまたまだ未熟に見えていた
「久しぶりに再会した息子はどうじゃ?」
「変わったと思います。 正直、何が忠夫をあそこまで変えたのかわからないですね」
カオスに話し掛けられた百合子は一瞬複雑な表情を浮かべたが、何故かそのまま素直に気持ちを口にしてしまう
一見ただの老人にしか見えないカオスだがその瞳には圧倒的な強さと存在感があり、百合子はふと自分の心を打ち明けていた
「人が変わるキッカケなど些細なモノじゃよ。 それに横島は運が良かった。 あやつが変わろうとした時、導く存在が近くに居たゆえにな」
カオスは寿司を食べながらも淡々と語っていく
その言葉は何気ない普通の言葉だが、まるで魔法のように百合子の心に響いていた
同じ言葉もカオスが言うと説得力がまるで違うのである
(千年生きた風格だとでも言うのかしら? 言葉の重みがまるで違う)
この時、百合子は完全にカオスにのまれて居た
いかに百合子とはいえ自分以上の天才に会った事などほとんど無いし、千年の重みが計り知れないほど百合子の心に響いている
「あの……、何故あなたほどの人が忠夫と一緒に?」
知れば知るほど深みのあるカオスに、百合子は完全に己より格上だと悟っていた
しかし同時に、何故カオスほどの人物が自分の息子と共に居るのか理解出来ない
「何故か一緒にか……。 改めて言われると難しいのう。 一言で言えば横島と魔鈴が馬鹿だからかもしれん。 それも世界一の大馬鹿者じゃからな」
少し考えるそぶりを見せたカオスだが、すぐにニヤリと面白そうに笑って横島と魔鈴を大馬鹿者だと言う
一方百合子は、そんなカオスの言葉の意味を静かに考えていた
「ワシがマリアを作ったのは700年ほど前じゃったよ。 電気どころか蒸気機関も無いあの時代、ワシを理解した者は数えるほどしかおらんかった。 ほとんどの人はワシを馬鹿者かキチガイ扱いじゃ。 その訳がわかるかな」
「人は自分の知る事しか理解出来ないからでしょうか?」
カオス問いに半信半疑で答えた百合子は、信じられない思いで聞いていた
『700年』
言葉で言えば一言だが、その時代に何を考えて魂の持つアンドロイドを作ろうと考えれたのかすら、百合子にはまるでわからない
仮に700年前に自分が生きて居たとしたら、間違いなくカオスを馬鹿者扱いしただろう
百合子自身も天才と言われた事も何度もあるが、この時百合子は真の天才と言うものを初めて知った
一流の霊能者は霊感が働くのと同じように、百合子にも常人には無い感性があったのだ
ただ有能なだけの人間なら星の数ほど居るが、百合子が半ば伝説となるほどの実績を上げた根本にはそのような感性が働いていたとカオスは見てる
(惜しむべくは若さゆえの未熟さじゃのう)
そしてカオスにはそんな百合子の弱点が見えていた
ある意味天才型の人間の特有の弱点とも言えるが、百合子には出来ない人間の気持ちがわからない
人には無い感性がある代わりに、人にある感性が何処か欠けているのだ
まあそれは歳を重ねて様々な経験を積めば理解出来ていくのだが、百合子は若くして大樹と結婚して引退したために経験不足が否めない
(出来の悪い息子を愛するがゆえに、その目が曇るか……)
かつて百合子が令子に対しての判断を間違ったように、中途半端な感性と自信が時として百合子の足を引っ張る
カオスから見れば百合子はまたまだ未熟に見えていた
「久しぶりに再会した息子はどうじゃ?」
「変わったと思います。 正直、何が忠夫をあそこまで変えたのかわからないですね」
カオスに話し掛けられた百合子は一瞬複雑な表情を浮かべたが、何故かそのまま素直に気持ちを口にしてしまう
一見ただの老人にしか見えないカオスだがその瞳には圧倒的な強さと存在感があり、百合子はふと自分の心を打ち明けていた
「人が変わるキッカケなど些細なモノじゃよ。 それに横島は運が良かった。 あやつが変わろうとした時、導く存在が近くに居たゆえにな」
カオスは寿司を食べながらも淡々と語っていく
その言葉は何気ない普通の言葉だが、まるで魔法のように百合子の心に響いていた
同じ言葉もカオスが言うと説得力がまるで違うのである
(千年生きた風格だとでも言うのかしら? 言葉の重みがまるで違う)
この時、百合子は完全にカオスにのまれて居た
いかに百合子とはいえ自分以上の天才に会った事などほとんど無いし、千年の重みが計り知れないほど百合子の心に響いている
「あの……、何故あなたほどの人が忠夫と一緒に?」
知れば知るほど深みのあるカオスに、百合子は完全に己より格上だと悟っていた
しかし同時に、何故カオスほどの人物が自分の息子と共に居るのか理解出来ない
「何故か一緒にか……。 改めて言われると難しいのう。 一言で言えば横島と魔鈴が馬鹿だからかもしれん。 それも世界一の大馬鹿者じゃからな」
少し考えるそぶりを見せたカオスだが、すぐにニヤリと面白そうに笑って横島と魔鈴を大馬鹿者だと言う
一方百合子は、そんなカオスの言葉の意味を静かに考えていた
「ワシがマリアを作ったのは700年ほど前じゃったよ。 電気どころか蒸気機関も無いあの時代、ワシを理解した者は数えるほどしかおらんかった。 ほとんどの人はワシを馬鹿者かキチガイ扱いじゃ。 その訳がわかるかな」
「人は自分の知る事しか理解出来ないからでしょうか?」
カオス問いに半信半疑で答えた百合子は、信じられない思いで聞いていた
『700年』
言葉で言えば一言だが、その時代に何を考えて魂の持つアンドロイドを作ろうと考えれたのかすら、百合子にはまるでわからない
仮に700年前に自分が生きて居たとしたら、間違いなくカオスを馬鹿者扱いしただろう
百合子自身も天才と言われた事も何度もあるが、この時百合子は真の天才と言うものを初めて知った