その二

その日の午後、六道女学院の職員会議でも横島の高校との姉妹校の話がされていた


「理事長、ただの公立校との姉妹校に何の意味が…?」

良くも悪くも冥菜を知る教員達は姉妹校の意味を尋ねる

冥菜が無駄な事をする事が無いのは良く理解しているようだ


「ただの公立校だからいいのよ~ うちの子達は世間知らずだから~、普通の公立校の子達と交流して欲しいの~」

相変わらずの口調で理由を説明する冥菜

六道女学院はエリートや金持ちの生徒が多いため、あえて一般高校生との交流が必要だと話す


「しかし、保護者から苦情が来ませんか?」

話を聞いていた教師の一人は、後で保護者から苦情が来るのではと心配していた

せっかく女子校に入学させたにも関わらず、こんな事で余計な虫が付いたら問題になるのは明らかである


「なら~、ずっと隔離して行けばいいの~? いずれ社会に出れば同じ事よ~ ある程度、人を見る目を養わなくてはダメでしょう?」

あまりいい顔をしない教師も、冥菜にそこまで言われると何も言えなくなった

元々、私立なため理事長の力が強いのだし、反対する気は無いようだが…


「あの…、その高校って確か横島君がおったような気がするんやけど…」

話が終わりかけた時、ふと高校名に聞き覚えのあった鬼道は恐る恐る声を上げる


「そういえばそうだったわね~ 忘れてたわ~」

ニコニコととぼける冥菜を見て、鬼道や一部の勘のいい教師達は気が付く


(狙いはそれか…)

心で横島に同情する鬼道だったが、こうなった冥菜を止められる人間はここには居なかった


結局、六道女学院でも横島の高校との姉妹校の話が正式に決まってしまう



場所が変わってその日の夕方、事務所に帰った横島は魔鈴にピートのファンレターの事や姉妹校の話をしていた


「ファンレターの件は、私や忠夫さんに来たファンレターの返事と一緒に扱えばいいので構わないのですが…」

魔鈴は姉妹校の話になると、あからさまに不愉快そうな表情になる

あれだけ騒がれた六道女学院に。横島をあまり行かせたくない

今の横島が浮気をするとは思わないが、面白くないものは面白くないのだ


「まあ、姉妹校って言ってもそんな交流するとは思えないし、行事の相互交流くらいだと思うけどさ。 何か別の狙いもあるかもしれないしな…」

魔鈴の不愉快そうな表情に若干困った表情で話す横島

安心させたいのは山々なのだが、冥菜の場合は別の意図がある可能性もある為、ある程度警戒が必要だった


「私達を取り込みたいのでしょうね… 未来とは違いお義母さんが居ませんし、私達は有名になりすぎました」

迂闊だったと魔鈴は思う


今まで有名になった魔鈴達に近付いて来た人間はたくさんいる

オカルト業界の関係者から、芸能界の関係者や政財界の関係者まで様々…

全てが魔鈴や横島を利用しようという人達では無いし、中にはいい人もいる

しかし魔鈴は基本的にそういった人達とは一線を置いて来た

自分達は権力争いなどに興味は無く、静かに暮らしたいと言うスタンスを示すために…


六道家が内々に横島や魔鈴に近付いて来ていたのはクラス対抗戦で理解していたが、まさかこれほど強引な手口を使うとは予想もしなかったのだ


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