その二

その後、破壊された森の後始末などは西条に任されて、横島達や令子達は帰っていく

そんな中、令子は帰りの車の中で不機嫌なオーラを全開にしている

理由はあの後の会話にあった


「ところで、あんた達さっきのアレは何だったの? それに霊力も高すぎたわ」

カオスにいくら圧力をかけても落ちないので、令子はもう一つの疑問だった横島と魔鈴の追求に回っていた


「あの魔法は何も存在しない亜空間と人間界を繋ぐ魔法です。 おそらく時間も空間も何も存在しない、全くの無の世界。 フェンリルはそこに追放しました。 方法や私達の霊力に関しては秘密です」

ニッコリと笑顔で答える魔鈴だが、令子の聞きたいことはもちろん答えない

そんな魔鈴の笑顔が気に入らないらしく怒りの表情で横島を睨む令子だが、横島は無言のままだ


「まあ、普通言わないワケ。 その技術で仕事してるんだし、まして令子に教えたらロクな使い方しないだろうし」

魔鈴の答えに納得していたのはエミだった

知りたくないと言えば嘘になるのだろうが、この業界は何かと表に出来ない技術が多いので商売敵に情報を流す方がおかしい

まして相手が令子の場合はロクな使い方をしないのは、彼女を知る者なら簡単にわかる訳だし


「ちょっとエミ! どういう意味よ!」

「おたくも本当に勝手なワケ。 もし立場が逆になったらおたくは教えるの? 自分が苦労して会得した技術や魔法を、他人に教える方がおかしいわよ」

今度は自分に怒りの矛先を向ける令子に、エミは馬鹿にしたような口調で令子を挑発する


「そこじゃないわよ!! 誰がロクな使い方しないって!!」

「もちろんおたく、美神令子よ。 おたくの脱税やヤクザを助ける片棒を担がされるのは誰でもごめんなワケ」

「このアマ……」

怒り狂う令子を更に挑発するような発言を続けるエミに、令子はエミを殺すような殺気をを発していた



「えーと…、とりあえず明日、言える範囲で話を聞かせてくれ。 一応報告書を書かなければならないのでね」

いがみ合う二人に関わらないように、西条は魔鈴と話を進める


「はい、では私達は夜が明ける前に帰らせて頂きます」

西条と唐巣との話を終えた横島と魔鈴は、カオス達と共にさっさと帰ってしまう

残された西条と唐巣は、いがみ合う二人を前にどうしたものかと頭を痛める

結局、西条と唐巣の犠牲の元ようやくいがみ合いを辞めた二人は、それぞれ別々に帰って行った


しかし、令子の怒りや疑問は帰りの車の中でも収まらない

良く考えてみれば何故横島があれほど変わったのか、不思議で仕方ないのだ


(絶対おかしいわ! あの横島があんな力を付けるなんて… 必ず秘密を暴いてやるわ!)

死津藻比女にノスフェラトウにフェンリル…

僅かな期間で横島と魔鈴が退治した魔族や妖怪は伝説クラスだけでも3体、改めて考えるとその結果はあまりに不自然だった

今回西条が語った過去の魔鈴から考えても、あまりに不自然な今の横島と魔鈴に令子は何故か二人の秘密が気になって仕方ない


それが前世から来る縁が原因なのか、それとも他の何かの影響なのかはわからないが、令子は無意識に横島に関わりを持とうとしていた


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