その二

それから横島達3人は、重傷者から治療をしていく

人狼の女子供や老人など、犬飼が現れた時に逃げ出して無事だった者達も戻って来て、治療の手伝いを始める


村始まって以来の怪我人の多さに人狼達の表情は暗く、子供などは涙を浮かべている者もいた


そんな中、一生懸命治療を続けた一時間後

「一応重傷者の治療は一段落したんだけど…」

横島の表情はまだ厳しいままである

文珠による治療で傷は塞がったため軽傷者は休めば問題無かったが、重傷者が問題であった

失われた血液や体力や霊力は文珠では回復しないため、今も危険な状態のままなのだ


「私は一旦戻って、カオスさんやタマモちゃん達を連れて来ます。 このままでは危険です」

長老や重傷者数名にヒーリングを連続でかけ続けていた魔鈴は、このままでは無理だと判断していた


「そうだな。 俺は長老達に霊力を注ぎ続けるよ」

魔鈴に変わり横島が長老達重傷者に霊力を送り、魔鈴は文珠で事務所に急ぎ戻って行く


「あの、私達は何をすれば…」

軽傷者の手当が一段落した人狼の女性達が、不安そうに横島に尋ねた

彼女達はヒーリングや霊力を送るのは出来ないようである


「とりあえず、栄養になる薬草なんかを集めておいて下さい。 後で怪我人に食事を作りますから」

横島の話を聞いた女性達は慌てて各家を周り、薬草や食材を集めに行った

一方治療が一段落したジロウは、村の入り口で犬飼が戻って来ないか監視をしている

最早、村には戦える者が居なかったのだ



それから30分後、カオス達を連れた魔鈴が戻って来る


「やれやれ、ひどくやられたもんじゃな…」

村に入るなり顔を歪めるカオス、村の家などが八房の攻撃でかなり被害を受けているのだ


「長老ーー!」

そんな中泣きそうな表情のシロは、一目散に長老の家へと向かって走っていく

どうやら過去の自分と同化したため、幾分子供に戻ったようだ


「マリア、犬飼が戻って来るかもしれん。 お前はここで見張っておれ」

「イエス・ドクターカオス」

魔鈴達とジロウは、マリアに村の警戒を任せて怪我人の元に急ぐ


「カオス! さっそく頼む。 長老が一番危ない!!」

長老の家に入ったカオスを見るなり、横島はホッとした表情を浮かべる

妖怪である人狼を診ることの出来る医師は、人間にはほとんど居ない

得意分野とは違うが、それでもカオスに勝る人間は居ないだろう


それからカオスは長老の診察を開始する


「うーむ、体の衰弱が酷いのう。 血と霊力も足りん」

診察をしながら渋い表情のカオスは、持って来た点滴らしき物を長老に処置して、同時に採血をした

そして同じ重傷者を次々に診察していく


「シロとタマモ、お前達は妖力を重傷者に送り続けろ。 横島の霊力より同じ妖力の方がいいゆえな。 後、ジロウ殿は無事な村人を集めてくれ」

テキパキと指示を出すカオスに従うタマモやシロやジロウ

横島は重傷者の一人に霊力を送り続けているし、魔鈴はカオスが採血した血の成分を調べているようである


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