その二

そして更に五日が過ぎて、満月まで後三日になっていた


西条と唐巣達は、付近に人家の無い山奥でアルテミス召喚魔法陣を書いている

フェンリルが現れたらここでアルテミスを召喚して、ジロウがフェンリルを退治するために頼むことになっていた



そしてこの日の深夜、いよいよ犬飼が密かに行動を開始する


「ククク… まさか、私が戻って来るとは思ってないようだな。 大いなる目的のため力を頂こう」

犬飼が現れたのは、なんと人狼の里である

大量の強い霊的エネルギーを求め考えた犬飼がたどりついたのは、仲間だった人狼達からエネルギーを奪うことだった

人間の霊能者よりパワーがあり、横島達にも見つかる心配も無い

それに一族で一番の使い手であるジロウが里に居ないことも、大きな理由であった


通行手形を使い堂々と里に侵入した犬飼は、まずはうるさい奴からエネルギーを奪おうと長老の家に侵入する


「こんな夜中に誰じゃ… 満月が近くて眠れぬのか?」

犬飼が長老へ近づくと、長老は人の気配に気が付き言葉をかけた

どうやら深く寝て無かったようである


「起きていたか… 狼族の自由と野性を取り戻すため、長老には協力してもらう!」

犬飼は長老に答えながらも、八房を抜き長老に向けて振り下ろす!

対して長老は犬飼の声を聞いた瞬間に起き上がり、間一髪で八房の斬撃をかわした


「ハアハア… 愚か者めが、仲間に刃を向けるお前に狼族を名乗る資格など無いわ!!」

長老は突然のことに息を切らしながらも、犬飼を睨みつける


「狼の誇りを捨て人間の犬に成り下がった長老など要らぬわ!!」

容赦無く八房を振るう犬飼だが、長老は霊波刀で防ぎながら家の中から逃げ出す

さすがに全ての斬撃を防げないが、上手く逃げながらなんとかかわしていた


(まずいのう。 ワシでは近付くことすら出来ん。 なんとか助けを呼ばなくては…)

外に出た長老は家の影に隠れてどうするか考え込むが、そんな間にも再び斬撃が向かってくる

家や周りの木を利用してなんとかかわしていくが、そう何度ももちそうになかった


「何事だ!」

そんな時、騒ぎを聞き付けた仲間達が起きて来てしまう


「いかん! 逃げるんじゃ! ジロウに犬飼ポチが現れたと連絡するんじゃ!!」

とっさに叫ぶ長老だが、すでに遅い


ザシュッ!!

すでに八房の一撃が仲間の人狼を傷付けていた



その頃、タマモは夜中にも関わらず目を覚ましていた

何故かはわからないが、霊感が騒いで仕方ないのだ


「シロ、あなたもなの?」

横島と魔鈴の部屋へ相談に行こうとしたタマモだったが、シロも何かを感じたらしく部屋を出て来ていた


「タマモ! 長老が殺される夢を見たでござる!」

慌てて話すシロを見て、タマモは少し考え込む

自分とシロの霊感は横島や魔鈴よりも遥かに鋭いのだ

そんなシロの夢とタマモの嫌な感じは同じ可能性が高い


「まさか…」

タマモとシロは慌てて横島達を起こしに行く

間違いであったならそれでいい、今は可能性がある以上動くべきだ

そう考えた二人は横島達を起こして、夢の話や霊感が騒いでることを告げる



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