その二

「令子ちゃん~!!」

冥子は心配そうに涙を浮かべて令子を見るが、幸い傷はかすり傷程度である


「やってくれたわね。 かなり大量に霊力を持ってかれたわ」

遠くなる犬飼を睨む令子だが、内心逃げ出せたことにホッとしていた



「今の女、かなりのパワーだった」

一方逃げられた犬飼だがあまり気にした様子は無く、令子から得られた霊力に驚きの表情を浮かべている


「あやつを殺せば一気にパワーが上がるな…」

不敵な笑みを浮かべた犬飼は、小さく呟き八房を鞘に納めて闇夜に消えて行く


そして令子達が犬飼と戦闘になったと連絡を受けた横島達は即座にその場所に向かうが、到着した時にはすでに犬飼の姿は無い


「心眼、ジロウさん頼む!」

犬飼の残した微かな痕跡を手がかりに横島達は急いで後を追って行くが、やはり慎重な犬飼は人混みに紛れたようで追跡も一苦労であった


「横島、この下だ」

心眼が指示した場所は地下に通じる下水道である


「下水道かよ…」

驚きと共に微妙に嫌そうな横島だが、諦める訳にもいかずに追跡を続行していく


「うっ…… 凄い臭いだ」

人狼のジロウは下水道の悪臭に、とっさに鼻を押さえてしまう

嗅覚が敏感な人狼は横島達以上に辛いようだ


「すまないが、私の鼻では追跡は不可能だ。 この臭いと水の流れが全ての痕跡を消している」

ジロウは申し訳なさそうに語るが、追跡が不可能なのは心眼も同じである


「一度戻りましょう。 次に犬飼が狙うのはおそらく美神さんでしょうから…」

どこにどう繋がるかわからない下水道を、無差別に探すのは無駄だと魔鈴は思う

それよりは未来と同じように令子を狙う可能性が高いと予想して、横島達は一端引き上げることにした



「奴は退治したの?」

「残念ながら追跡不能でした。 下水道に入ったとこまでは追えたのですが…」

「はぁ……」

合流した魔鈴に犬飼を退治出来たか聞く令子だが、その答えにため息を漏らす

精霊石を三個も使ったため、せめて人狼発見の一億が欲しかったようだ


「下水道か… どうりで地上を探しても見つからないはずだ」

一方西条は警察に連絡をして、下水道などの人が通れそうな地下の地図を手に入れようとしていた


「今後は恐らく霊能者を狙うわ。 私に付けた傷からかなり霊力を持って行ったから」

「恐らく令子ちゃんを狙うだろうな。 霊力のポテンシャルは君が一番高い」

令子や西条にエミや唐巣が今後の予測と対策を考えるが、やはり予測は未来と同じで令子が狙われる可能性であった


「それで令子、退治する方法はあるの?」

エミは狙われるだろう令子に犬飼の退治方法を尋ねるが、令子は難しい表情のまま考え込んでしまう


「美神君でも難しいとなると困ったな… 私やエミ君は直接戦闘は向かないし」

令子の様子を見た唐巣は同じく考え込んむが、表情はかなり厳しい


「あの…、その前に美神さんの事務所は危険なので、おキヌちゃんを避難させた方がいいのでは?」

話し合いが煮詰まった頃、魔鈴はおキヌの避難をするように進める

これも未来の経験から危険な可能性が高いと予想しているためであった

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