その二

その後、細かい捜索地域の絞り込みや割り振りを行い、この日の話し合いは終わる

令子と冥子やエミと唐巣のチームには、それぞれ2人ずつ警視庁の狙撃手が護衛として着くことも決まった

西条は横島達にも護衛を着けるように進めたが、魔鈴は丁重に断っている

護衛をするならマリアの方が遥かに優秀な上、下手に人数を増やせば横島と魔鈴の足手まといにしかならないのだから


「結局、未来と似たような展開になったな…」

事務所への帰り道、横島は少し複雑そうにため息をはく


「やはり個人の力で歴史を変えるのは簡単ではないのでしょうね」

横島に答えるように話す魔鈴だが、彼女の表情も優れない


「タマモちゃんとシロちゃんにも捜索を頼みますか?」

「ダメだ。 事務所だけの仕事ならまだいいが、オカルトGメンに二人が協力した実績は作りたくない」

少し考え込んだ末、タマモとシロに犬飼の捜索を手伝ってもらうか悩む魔鈴の話を、横島は即座に否定する


実際に犬飼を探すならば、タマモとシロの捜索が一番発見する可能性が高い

それにタマモとシロは頼まれれば喜んで協力するだろう

しかし横島は、何があってもそれだけはさせるつもりは無かった


現在の力の落ちた二人では犬飼に関わるのは危険過ぎること

それに一番の理由は、横島がタマモとシロにGSの仕事に関わらせる気が無いことだ


「では、未来での約束通りに?」

「ああ、状況は変わったけどあいつらを前線に出すつもりは無いよ」

再度確認する魔鈴に横島はしっかりと頷き言い切る

そんな横島を、魔鈴は暖かく見守って二人は事務所に帰って行く



その頃、令子達はまだオカルトGメンの事務所に居た

警視庁から来る狙撃手との顔合わせの為である

実際捜索するのは今夜からだが、事前に話し合う必要があるのだ


「結局、横島君達どうやって妖刀持ちの人狼を退治するつもりかしら?」

あわよくば退治して西条と魔鈴の両方から料金を貰いたい令子は、人狼の退治の方法を考えていた


「さてね、そこは教えてくれなかったんだ。 ただ魔鈴君が責任は持つと言い切ったから、自信はあるようだが…」

西条もそこまでは知らないらしく、少し苦笑いを浮かべて首を傾げる
 
本来は詳しい退治方法なども話し合いたいのだが、魔鈴に頼まれたため任せることにしてなっていた


(ノスフェラトゥを退治したのもあの二人だしね… なんか裏技があるわね)

令子は言葉にこそ出さないが、魔鈴が自信を持つ何かがあると直感的に感じている


(横島があんなに使えるようになるなんて…)

考えが横島に及ぶと令子の表情が一瞬だけ変化するが、幸い誰にも気付かれなかった


「GS犬なんかは使えないのかね?」

「すいません神父。 一応本部に申請は出したのですがGS犬は元々数が少ない上、この事件は犠牲者も少なく事件としての扱いは大きく出来ないのです」

唐巣の問い掛けに申し訳なさそうに答える西条

現時点では事件としては大きくないこの事件で、ここまで動いてるのは魔鈴の話が元である

西条や唐巣は魔鈴の話を信じてるため動いているが、西条の権限を越える部分は証拠の無い魔鈴の話だけでは動かすのは難しいようだ

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