その二

西条達がそんな話をしている時、横島はピート達と別に話をしていた


「人狼か…、強いのか?」

バトルジャンキー丸出しの雪之丞は、ワクワクを隠しきれない様子で横島に問い掛ける

しばらく唐巣の元で地味な修業などが多かったせいもあり、かなり欲求不満のようであった


「ああ、一回戦ったが逃げられたよ。 人狼の身体能力に八房はかなり厄介だ。 周りに一般人が居たらとてもじゃないが戦えない」

横島は険しい表情で話すが、雪之丞は興味津々な様子である


「俺も戦いてぇな~」

「でも雪之丞の能力では、妖刀の相手は向かないですよ。 相手が霊力を奪い取る性質があるなら、魔装術も多分霊力を奪われると思うけどな…」

やる気満々の雪之丞に対してピートが冷静に分析するが、雪之丞はやってみないとわからないと思ってるようである



一方西条達の話はエミの言葉で停滞したままである

何日掛かるかわからない危険な人狼探しに、令子とエミは乗り気ではないようだ


「仕方ない。 犬飼を発見して逮捕に繋げた者には僕が個人的に5千万、逮捕した者には一億を出そう。 だが決して無理しないでくれ。 こちらからも狙撃手を護衛に付けるが、銃は効かないと言う情報もある」

少しため息をついた西条がお金を言うとと、令子とエミの表情が一変する


「マジ!?」

「さすが道楽公務員!」

あからさまな二人の態度の変化に、西条は微妙に引き攣った表情で頷く


しかし、そんな様子を見て表情が曇ったのは魔鈴である

「では、私からも出しましょう。 この事件は出来るだけ人狼族の者が中心になり解決するようにしたいのです。 犬飼を発見して私達が行くまで監視して頂ければ、人狼族からの依頼料として五千万出します」

魔鈴が恐れたのは、お金に釣られた令子やエミが犬飼に殺されることであった


未来の事件の内容は魔鈴も横島から聞いて知っている

いかに令子やエミが本気になっても、犬飼は倒せないことは明らかなのだ


それに令子の存在も問題であった

魂の結晶を持つ令子の潜在霊力は、横島や魔鈴と言った人間を越える存在を抜きにすれば最も強力である

横島や魔鈴のように強い相手よりも、令子を斬る方が遥かに安全で効率がいいことを犬飼に気付かれてはダメなのだ


「あんた達そんなに人狼から依頼料貰ってるの?」

魔鈴の話に令子の瞳が怪しく光る

どうやら魔鈴が人狼からもっとお金を貰ってると勘違いして、自分が倒して依頼料を人狼からも貰えないかと考え初めているようだ


「いえ、人狼族から頂いた料金は百万くらいでしょうか… 人間社会と交流の無い人狼がお金を持ってるはず無いじゃないですか」

少し呆れたように令子を見る魔鈴の話には、令子だけでなくエミや西条まで驚いてしまう


「なんでわざわざ人狼のために自腹を切るワケ?」

魔鈴を探るように見つめるエミ

彼女は魔鈴の話に裏があるかと探っているようだ


「個人的に人狼族の考えに共感しただけです。 ご存知とは思いますが、私の事務所には妖怪も居ます。 むやみに妖怪の弾圧や排除に繋がりそうなこの事件を、放置したくないだけです」

険しい表情で語る魔鈴の言葉に、令子やエミは無言になってしまう


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