その二

長老の家に案内された横島と魔鈴とタマモ

そして長老とジロウとシロが横島達の向かいに座っている


「うぐっ… 父上…」

シロは相変わらず泣き止まずにジロウから離れない

ジロウは何故これほどシロが泣くのか理解出来ずに、ただ慰めるだけであった


「初めはおぬしらが盗っ人かと思ったのじゃがな…」

「それは違うと思います。 私が見た時は、犬飼が八房を手にしてこの方達が止めてました」

横島達の目的を読めずに考え込んでいた長老に、ジロウは見たことを伝え状況的に盗っ人では無いと感じていた


「ちっ… 違うでござる! 先生は犬飼を止めようと…」

ジロウと長老が横島達を疑っているのを感じたシロは、涙を流しながら否定する


シロがあまりに真剣な表情で横島達を庇うので、長老とジロウは困惑を隠せない

そもそも人狼の里から出たことが無いシロが、何故人間を知っているのか理解出来ないのだ


「先生、魔鈴殿… 話していいでござろうか…?」

ようやく涙が止まったシロは、横島と魔鈴を見て確認をする


「ああ、お前に任せるよ」
 
シロが確認した意味を横島達はすぐに理解して、全てをシロに委ねた

第三者の横島達よりも、シロが語る方が遥かに説得力がある

無論、秘密を第三者の人狼達に話す不安が無い訳でな無いが、シロが話したいと願うなら横島は止めなかった


「長老、父上… 拙者は先生達を追いかけて、未来から来たでござる」

横島達と長老とジロウの間に座ったシロが突然語りだした言葉に、長老とジロウは驚き返す言葉が浮かばない

シロの様子や横島達とのやり取りを見ても、嘘や戯言には見えないのだ


それからシロは真剣な表情で、未来での犬飼と八房の戦いを語りだしてゆく

ジロウを犬飼に殺され、敵討ちのために人間の街に一人向かったこと

犬飼が八房で伝説のフェンリル狼になってしまい、アルテミスの力を借りて倒したことなどを、シロは一生懸命に長老とジロウに訴える


そして犬飼を倒した後は、話がアシュタロス戦後まで飛んでいた

シロは未来でアシュタロス戦の真実を聞いて知っているが

直接関係無いことや、横島の気持ちを考えてあえてそこを避けていた


横島を師と仰ぎ、横島の元で10年近く修業した話などを大まかに語る


そして話は核心に迫った

大規模な魔法の儀式を行っていた横島や魔鈴達が、突然消えてしまったと言う

第一発見者のタマモとシロは、周辺に時空震の跡を見つけて一か八か横島と魔鈴達を助ける為に時空震の跡を追って来たと…


話が終わる頃にはすでに外は明るくなり初めていた

シロの話は長老達だけではなく、横島達も驚きを隠せない


「お前ら…、どうやって時間移動して来たんだ?」

長老とジロウが疑問に思っていたことを聞いたのは横島である

時空震を見つけることは、儀式周辺にカオスが設置した複数の観測機械でわかるのだ

しかし、時間移動は簡単では無い


「儀式の周りに文珠が大量に落ちてたわ。 多分儀式の失敗により不発だったんでしょうね。 私とシロは力を合わせて文珠で時間移動を発動させて、横島と魔鈴さん達の時空震の痕跡を追跡したの」

疑問に答えたのはタマモである

カオスの複雑な周辺機器を扱うのはシロでは不可能なのだ

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