その二

横島は心眼と共に辺りを警戒したがそれ以上人影は見あたらなく

愛子と加奈は怯えるように横島の後ろにおり、ピートとタイガーは緊張感いっぱいで男を警戒していた


「それで用件は? 仕事の依頼なら事務所を通してくれ」

ずっと相手のペースで物事が進みあまりいい状況では無いが、横島としては相手の真意を探らねばこれ以上どうしようも無い

そのため内心は警戒したままだが男に語りかけた


「私は土御門雅也。 古より陰陽術を受け継ぎし家の者。 我が家に伝わりし伝承に従いあなたに会いに来ました。 一緒に来て下さい」

男はそう話すと、横島の返事を聞く前にゆっくりと歩き出す


「横島さん、どうしますか?」

ピート達は怪しい男の真意がつかめず、困惑した表情のまま横島を見つめた


「本当は無視して帰りたいんだが、そうもいかないな…」

少し悩むが土御門の名前を出されたのだから、行くしかないと思っていた

ただ横島が決断に迷ったのはピート達の事である

危険かどうかわからないので本当は1人で行きたいのだが、逆に横島と離れた後に捕らわれて人質にでもされたら余計に厄介なのだ


「横島、魔鈴殿を呼んだ方がいいのではないか? ここでピート殿達から離れるのは得策ではない」

横島が悩む中、心眼が妙案を言い出す


「そうだな… それが一番いいか」

ピート達が見守る中、横島は魔鈴に電話をしてこの場所に来てもらった

魔鈴は横島の文珠を所持しているため、その気になれば簡単に転移して来れるのだ


「本当に土御門家の人間なのですか?」

慌てて転移してきた魔鈴は、話を聞いても半信半疑である


「うーん、わからん。 ただ、陰陽術を使ってたのは確かだ」

横島と魔鈴は、土御門を名乗る男をかなり離れた後ろから着いて行きながら話し込んでいた


「ねえ、横島君。 さっぱり意味がわからないんだけど、その土御門って人知ってるの?」

突然の緊迫した事態に無言だった愛子だが、少し落ち着いてきたので事情を知りたいようだ

それはピートやタイガーや加奈も同じだったらしく、事情を知りたそうに横島と魔鈴を見ていた


「知ってると言うか、なんと言うか… 日本のオカルト業界で最も古くから続く家なんだよ」

「現在の日本のオカルト業界では六道家が最も影響力がありますが、その六道家を表とするなら土御門家は裏でしょうか。 GSではないので一般的には知られてませんが、古くからの秘術などを伝承して日本の霊的防衛を影から支えている家なのです」

横島が簡単に話したのを補足するように魔鈴が説明をしていき、ピートや愛子達は驚きを隠せずただ聞いている


実は横島や魔鈴が土御門家に詳しいのには理由があった

かつて未来で横島と魔鈴はルシオラ復活の為、様々な魔法や術を研究していた

主に研究開発したのは魔鈴とカオスが得意な西洋魔法である


しかし、その過程で東洋系の術や陰陽術なども調査していた

その時知ったのが古からの陰陽術などを管理する土御門家の存在である

一般には失われた陰陽術などを代々伝えてきて、GSのように商売としてではなく寺社仏閣などの古くからの繋がりの場所を守って来た家柄であった


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