その二

全てが終わり銀一は次の仕事がある為、一足先に帰ることになった


「横っち、今度は東京でな」

「ああ、またな銀ちゃん。 暇が出来たら事務所に来てくれよ」


あまり話す時間は無かったが、お互い元気で頑張ってる姿を見た横島と銀一は笑顔である


「あの… 応援してます! これからも頑張って下さい」

愛子と加奈はサインとツーショット写真まで撮り、非常に満足そうな表情を浮かべて銀一にお礼を言う

「ああ、今日はありがとうな。 また横っちとみんなで会おうな」

銀一と握手した時の2人の表情は、それは幸せそうな表情をしていた

その後、ピートやタイガーとも挨拶した銀一は、足早に次の仕事に向かっていく



「いっちゃったわね…」

「うん、いっちゃったね」

感慨深げに一息つく愛子と加奈


「本当に横島君と一緒だと驚きの連続ね~」

「うん、もう誰が友達でも驚かないわ」

横島を見てクスクス笑う愛子につられるように、加奈も笑顔を見せた


「いや、俺も驚いてるんだが… まさか修学旅行に来て銀ちゃんに再会するとはな~」
 
横島の場合は、人の縁の深さと歴史の複雑さを感じている

少しずつ変わっている歴史の影響がこんな場所での出会いを生んでしまった


今回は結果的にいい方に変わったが、今後も必ずしもいい方に変わるとは限らない

横島はこの先の未来に僅かだが不安を感じていた


(この先に出会うはずの人達と無事出会えればいいけどな…)

「横島さん、どうかしましたか?」


いつのまにか険しい表情で考え込んでいた横島に、ピートは何かあったのかと問いかけ、周りでは愛子達も不思議そうに横島を見ていた


「いや、ちょっと考え事してただけだよ。 こんな再会もあるんだなって思ってさ」

苦笑いを浮かべて誤魔化す横島

ピートや愛子達は少し違う気はしたが、これ以上追求することは無く、再びテーマパークを歩いていく


その後も横島達はテーマパークを楽しんでいくが、一度生で顔を覚えられている為、途中で何度も先ほどの撮影の見物をしていた人達に声をかけられる


だがそのたびに愛子と加奈がマネージャーのように相手を整理して、握手と写真だけは許可してファンの子達をさばいていく


サインを断った理由は簡単である

横島はサインの練習をしてないので書けないのだ

さすがに普通に名前を書くわけにもいかないので写真で我慢してもらっていた


「なんかこれじゃあ、俺が見られに来たみたいだな…」

すでに百人を軽く超える人数と握手した横島は少し複雑な気分であった

実際には声はかけられないが横島を見る視線はその何倍もあるのだから


「そんな顔しちゃだめよ! 有名人なんだからね。 それに最初に正体バラしちゃったの横島君なんだからね」

何やら言動までマネージャーに似てきた愛子は笑顔で横島をたしなめる


「横島君、サインの練習しなきゃダメよ? 女の子は勇気を振り絞ってお願いしてるんだから…」

愛子に続いて加奈にもダメだしを受けた横島は、困ったような苦笑いを浮かべるしか出来ない


結局その日1日テーマパークを楽しんだ横島達だが、横島とピートはいろんな意味で疲れたのは仕方無い現実だろう


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