その二

横島達はたくさんの見物人に囲まれて身動きのとれない

そんな中、テーマパークの警備員と撮影スタッフは事態の収集を初めていた


見物人に冷静になるように呼びかけながら、警備員が人混みをかき分けて横島の元にやって来る


「こちらにいらして下さい」

横島を人混みの外に誘導しようとする警備員に従って、横島と愛子達は人混みからの脱出をしていく


「落ち着いて下さい。 撮影が中止になりますよ!」

スタッフは見物人に語りかけるが、あまり効果はない

横島やピートを見ようとする見物人は減らないのだ


「みんな、ちょっと冷静になってくれへんか? テーマパークに居る他のお客さんに迷惑をかけたらあかん」

そんな中、拡声器で見物人に声をかけたのは銀一であった

混乱の収束の為に銀一が姿を現して見物人達に話しかけている


そんな銀一の姿に、横島を見ようと押し寄せる人混みが少し緩む

銀一に近い見物人は銀一の方に流れて行ったのだ


「今のうちに、こちらに…」

警備員は、横島達を銀一達やスタッフの控え室に誘導していく


「は~、とんでもない目に会ったわね… 横島君、今日のお昼は君のおごりね」

控え室に入った加奈はホッと一息ついて思わず笑っていた


「本当ね~ 私たちいつから横島君のマネージャーになったのかしら?」

意味深な笑みを浮かべる愛子

2人のからかうような視線に横島は困ったように謝っていく


「悪いな~ まさか人違いとも言えないしさ~ 動けなくなるとは思わないだろ?」

言い訳を並べる横島だが、愛子や加奈だけでなく、ピートやタイガーまで少し呆れたように横島を見つめる


「魔鈴さんが居ないと案外抜けてるのね~」

クスクス笑う愛子

どこか頼りないその姿は、前の横島を思い出させる


「まあ、横島さんらしいと言えばそれまでですがね」

ピートも愛子につられて笑い出してしまう


まるで別人のように変わった横島だが、やはり全て変わった訳ではない

変な話だが、愛子達はそんな前の横島のような部分に懐かしさを覚えていた


(今の横島君もいいけど、前の横島君も嫌いじゃなかったのよね)

愛子が密かにそんなことを考え懐かしんでると、部屋のドアをノックする音がした


「横っち! 久しぶりやな~ 大丈夫やったか?」

部屋に入ってきたのは銀一である

突然親しげに横島に話しかける銀一に、愛子と加奈は目が点になる


「ああ、銀ちゃんが助けてくれたんやな。 ありがとう、助かったわ」

横島も懐かしそうに銀一に話しかけるが、愛子達はあまりの事態に言葉がでない


「俺のこと知っとったんか? 嬉しいな~」

自分を知っていたことを喜ぶ銀一に、横島は微妙に苦笑いを浮かべる


(未来では知らなかったんだよな…)

まさか、未来で知ったとも言えず笑って誤魔化す横島


「横っちも立派になったな~ GSしてるんやって? ちゃっかり香港で銀幕デビューしとるし、ほんまに驚いたわ」

「いや~ 映画はデビューとかそんなつもりじゃなかったんだよな~ 俺はてっきりスタントかと思って受けたんだし」

銀幕デビューと言われて、横島は少し恥ずかしいような不思議なような気持ちになる

偶然に偶然が重なった結果の銀幕デビューであり、映画の大ヒットなのだ

決して狙ってなった訳ではない現在の結果が不思議で仕方ない
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