その二

次の日、修学旅行中の一行は大阪の某テーマパークに来ていた


「凄いわね! 一度来てみたかったのよ!」

別世界のように豪華絢爛なテーマパークに目を輝かせてるのは愛子である

しかもその手にはガイド本が握られており、来る前からかなり楽しみだったようだ


「どうでもいいが、学校からほとんど出ないお前がなんでここを知ってるんだ?」

学校の妖怪のはずの愛子だが、妙に俗っぽい

クラスメートとは普通に流行の話やテレビドラマの話などしているし、ピートやタイガーや昔の横島よりもいろいろ知っている

横島は前々から不思議であった


「あら、私だってテレビくらい見るわよ? 今は居ないけど、昔使ってた宿直室にはテレビくらいあるもの」

何を今更と言いたげな表情で不思議そうな横島を見つめる愛子

ある意味横島やピート達より人間らしいようだ


「ピートとタイガーより人間に馴染んでるな…」

感心したように呟く横島に、ピートは苦笑いを浮かべタイガーは微妙にへこんでいた


「さあ、みんな早く行かないとたくさん回れないわよ!!」

愛子は横島達と加奈を引っ張って走り出す


その日は天気も良く人が多い

テーマパーク内はたくさんの人で賑わっている



それから数時間、横島達は愛子の練りに練った計画通り数ヶ所のアトラクションを体験していた


「怖かったですノー」

「世の中も変わりましたね…」


過激なアトラクションに顔色が青いのはタイガーとピート

初体験のスリルは少々刺激が強すぎたようだ


「ちょっと休むか?」

「もう~ 2人共だらしがないわね! それじゃあ立派なGSになれないわよ!」

「今ので怖かったの? 次はもっとスリルがあるのに…」


ピート達の様子に苦笑いを浮かべる横島が愛子達を止めるが、2人は少し不満らしい

しかも、今までのはまだ軽いようだ


「まあまあ、時間はまだあるんだしさ。 ちょっと休憩にしよう」

結局横島が間に入って、近くの店で休憩することになった


ドリンクを飲んで一息つくピートとタイガーの向かいでは、愛子と加奈がこれからの回るアトラクションを楽しげに相談する


そんな周りを横島は感慨深げに見つめていた

(こんな未来もあったんだろうな…)

ふと、未来での高校生活を思い出すと複雑な気分になる

色香に惑わされたのか、運命に弄ばれたのかはわからないが、令子に関わり普通に送れなかった高校生活


もしかしたら…

平行世界のどこかでは、愛子達に混じって騒いでいたかもしれない

そう思うと、横島は今の環境が非常に大切に思えた


(ルシオラ… ベスパ… パピリオ… お前達に必ず未来を見せてやるからな)

まだこの世に誕生してないだろう彼女達

横島にとって愛する人であり、家族でもある

そんな彼女達を思い出し、横島は心でそっと誓いをたてる



そんな横島達の周りでは、人が急激に少なくなっていた

何やら騒ぎながらみんな同じ方向へ走っていく


「なんかイベントでもあるの?」

「変ね… この時間にイベントは無いはずなんだけど」

加奈は不思議そうに聞くが、愛子でも知らないらしくガイド本をめくり調べていく


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