その二

「はい… 僕達は聞いてませんでしたよ。 それより愛子さん達こそなんで禁止されてる露天風呂に?」

ピートは愛子達とは逆の景色を見ながら、困ったように話していた


「えっ… いや~ その~」

愛子は慌てた様子で言葉に詰まる


「愛子ちゃんが、露天風呂行きたいって言ったんじゃない」

クラスメートの女子が笑って愛子につっこむ

彼女はあまり恥ずかしい様子では無く

露天風呂に居たのが横島やピートな為、少し嬉しいようだ

ちなみにタイガーはどうでもいいようで、見てない


「あっ… その… お風呂なんて初めてだから… 入ってみたくて…」

愛子は恥ずかしそうにモジモジと説明する


「ああ、そうか… 風呂に入ったことあるわけ無いか」

横島はピートと同じく、景色を見ながら愛子達と会話する


「私の場合、露天風呂なんて二度と入れないかもしれないし…」

愛子は気を紛らわそうと景色を見ながら答える


互いに反対側を見ながら会話は続く中


「横島サン、アッシは上がりますケン」

女の子が苦手なタイガーは、逃げるように風呂が上がっていく


「ああ、俺も上がるよ。 じゃあ、お前らはゆっくり入りなよ」

横島とピートも、これ幸いとばかりにタイガーに続く


混浴と知った以上、他にもクラスメートが来るかも知れない

これ以上騒ぎになるのは勘弁して欲しかった


別に悪いことをしては居ないが…

変な噂が広まっても困る


(参ったな… まさか愛子達と混浴するとは… 偶然とはいえ、めぐみになんて言おう)

横島は浴衣に着替えながら、難しい顔で考え込む

予想外の事態に帰った後が怖かったのだ


「横島さんは、やはり変わりましたね… 少し前なら喜んでたでしょうに」

ピートは少し前の横島を思い出し苦笑いしている


「理由知ってるだろ? めぐみを悲しませること出来る訳無いだろ?」

横島はピートを少し睨むようにため息をはく


「横島サンは羨ましいですノー 美人で優しい彼女が出来て…」

タイガーは相変わらず羨ましそうだ

女の子は苦手だが、彼女は欲しいらしい


「お前も時期に彼女が出来るさ」

横島は未来でのタイガーを思い出す

不器用だが、一生懸命に魔理と付き合っていたタイガーなら、この時代でもいい出会いがあると思った


「そうですかいノー」

タイガーは自分に彼女が出来るのが信じられないようだ


「まあ、焦らないことだな… 出会いはいつも意外な時だからさ」

横島は昔を思い出し、少し懐かしそうに微笑む


魔鈴とルシオラ…

横島の運命の相手との出会いは、本当に意外な時だった


「さて、部屋に戻って飲むか!」

横島は気分を変えて部屋へ戻っていく


「ハハハ… お手柔らかにお願いしますよ」

ピートは飲む気満々の横島に、少し苦笑いしていた


「アッシは酒飲んだこと無いんしゃがノー」

タイガーは不安と楽しみが混じった表情で呟く


「大丈夫だって、美味い酒買ったからな…」

横島達はそんな話をしながら、部屋へ戻った



その頃、露天風呂に入っていた愛子達は…


「せっかくいいとこで会ったのに上がっちったね~」

クラスメート女子は少し残念そうだ


「恥ずかしかったわ… 私、男の人の体生で見たの初めてよ」

愛子はやっと落ち着いたらしく、気持ち良さそうに入っている

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