その二

京都駅に到着すると、駅のホームは大勢の女性でひしめき合っていた

比較的若い女性が多く、みんな誰かを待っているようである


新幹線のドアが開くと、大勢の女性達は出てくる人に注目があつまる

(まさか…)

ピートはまさかと思いつつ、目立たないように新幹線を降りていく


「なんでこんな混んでるんだ?」

横島やクラスメート達は不思議そうに女性達を見る


横島達は関係無いようで、無事にホームから改札口に向かう頃…


キャー!

キャーキャー!


女性達の凄まじい黄色い声が駅の中に響く


「アイドルでもいるのかしら…?」

人ごみで止まれないが、愛子は気になるようで後ろを振り向く

しかし、大勢の女性達の姿と声で誰が居るのかわからない


「この人ごみでは誰か判別するのは無理ですケン」

横島達のクラスで一番デカいタイガーでも、騒がれてる人を判別するのは無理なようだ


「う~ん… 残念ね」

愛子や女子達は誰だか気になるようで、残念そうに改札口へ向かう


横島達が人ごみをかき分けやっと駅から出ると、そこにもたくさんの女性が居る


そんな中を横島達は、待っていたバスに乗り込み、ようやく落ち着いて一息つく


「まさか京都に来てまで、人ごみに巻き込まれるとはな…」

京都は、東京よりは人が少なく静かだと思っていた横島は、少し疲れたように呟く


「私は最初横島君を待ってる人だと思ったわよ」

愛子はクスクス笑い横島を見る


「僕も一瞬焦りました…」

ピートは緊張感から解放されてホッとしている


「いや、さすがにあれは有り得ないだろ~」

横島はそんな愛子やピートを笑って否定する


「誰だったのかしらね~」

愛子はバスの窓から駅を見るが…

バスは出発していく


「これが京都ですか…」

ピートはバスの窓から見える街並みを珍しそうに眺めていた


都会的なビルや街の中に、古い家や寺などが点在する

その中でもピートは、古い建物や寺などが珍しいようだ


「京都か…」

横島は現代の京都に来るのは小学校低学年以来である

その記憶は未来の記憶で、20年以上前の記憶
横島にとっては戦国時代の京都の方が記憶に新しい


「どうしたの横島君? 黄昏ちゃって…」

愛子は不思議そうに横島を見る


「ちょっと昔を思い出したんだよ… 知り合いが居たんだ」

横島の遠くを見るような瞳を、愛子やピート達は静かに見つめる


「初恋の人でも居たの?」

愛子はニヤニヤとして、横島に問いかける


「初恋!? アハハッ! そんなロマンチックな話じゃないよ。 相手はおっさんだしな~」

横島は相手を思い出し、思わず吹き出してしまう


「そうなの?」

愛子は横島の遠い目に、女性だと思っていたのだ


「愛子は本当に青春が好きだな~」

横島は愛子の青春思考に笑顔がこぼれる


「当然でしょ! 高校生が青春をしないで誰が青春をするの!!」

愛子は横島に熱く青春を語り出す…


(俺は2回目なんだよな… まあ、前は青春なんて余裕無かったけど…)

精神年齢が20代後半の横島は、苦笑いして愛子の話を聞いている

と言うか、青春を語る愛子は誰も止められない!


結局、最初の目的地まで愛子の青春講義は続いていく


2/100ページ
スキ