その一

「いったいどうなってるの?」

自分の体を見回す愛子の周りには、クラスメートが集まって驚きの声をあげている

「おはようございます」

「おはようですジャー」


人だかりの中をピートとタイガーが登校して来た


「「………」」

ピートとタイガーは愛子を見て固まってしまう

机の妖怪の机が無いのだ

その意味を理解出来ないでいた


「簡単な仕組みだよ。 ネックレスに魔法をかけてある。 本体を中に封じ込めて、幽体だけ外にたしてるんだ。 愛子の場合、本体は机だから、机がネックレスに入ってるんだ」

横島の説明を愛子やクラスメートは驚き、愛子の周りは人だかりだ出来ている


「凄いですね~」

オカルトを知るピートも驚き、ネックレスを見る


「たいした魔法じゃないよ。 吸引札あるだろ? 基本的にはあれと同じ。 めぐみとカオスがそれを愛子用に調整はしたがな…」

横島は簡単に説明したが、愛子はまだ信じられないようで自分の体を見つめている


「簡単にいいますね… まあ、横島さんの事務所しか無理ですよ」
 
ピートは軽い調子の横島に少し呆れ気味である


ドクターカオスと魔鈴なら簡単なんだろうが、妖怪の本体をネックレスに封じ込めて、幽体だけを外に出すなど普通では無理である


「横島君… ありがとう……」

愛子は目に涙が溢れ、感動で言葉に詰まっている

人だかりが無ければ抱きついていただろう

まさか妖怪の自分に、こんな物を用意してくれるなんて信じられ無かった


「京都ではネックレスを外すなよ? 神社や寺には妖怪避けの結界がある場所が多いからな。 そのネックレスには結界を中和する魔法もかかってる」

感動する愛子やクラスメートに、横島は少し照れくさそうに話して修学旅行が始まる


横島達を含めて、学校の同学年約120人は新幹線で京都に向かう

新幹線で横島は愛子と座り、向かいにはタイガーとピートが座っている


「横島君、このネックレス高いんじゃないの? 本当にもらっていいの?」

愛子はネックレスを見つめて、横島に申し訳なさそうに聞く


「うーん、作った物だからな… 値段はわからないよ。 第一、売る気は無いし」

横島は少し考えるがあまり気にした様子は無い


「値段は付けられないですね…。 軽く億は行くんじゃないでしょうか?」

ピートは精霊石などと比べて考え、値段を推測する

愛子はピートの言葉に驚き、信じられない金額に顔が青くなる


「ピート、あんまり脅すなよ… 作れる人が居ないから、高くなるだけだよ。 ただ、他人には渡さないでくれ」

横島は笑いながらピートと愛子に話すと、ピートは苦笑いして頷き、愛子はしっかりと頷いた


横島が何故、他人に渡すなと言ったかと言えば、愛子に渡したネックレスは人間には使えない

だが、愛子のような九十九神の妖怪には使えるのだ

ネックレスは体から離すと、本体が現れるが…

使い方によってはロクな使われ方をしないので、無闇に世の中に広める気は無い


これは横島達の魔法や魔法科学全般に言えることで、横島達は今までも他人に技術を教えたりしたことは無い



「横島君、本当にありがとうね! みんなと同じように旅行が出来るなんて思わなかったわ!」

愛子は新幹線の車窓を眺めて嬉しそうに笑っている

本体を気にしないで、自由に旅行を出来るとは、思ってもいなかったのだから…
100/100ページ
スキ