幻の初恋

その頃横島は、今日も買い物と言う理由で小竜姫と出掛けていた


「今日は何処に行きましょうかね~♪」

すっかり人界の楽しさを知った小竜姫は、今日も何処かに遊びに行く気満々らしい


「小竜姫様、そういえばGSのバイトはどうすればいいんすか? 辞めるならちゃんとした方いいと思うんすけど…」

腕を組み横島にもたれ掛かるように幸せそうに歩く小竜姫だが、バイトの話をしたらピクリと足が止まってしまう


「まさか、美神さんに会いたくなって来たなんて言わないですよね? 胸ですか! やっぱり胸なんですね!!」

さっきまでの幸せそうな小竜姫の表情が、一瞬で変わっていた

目に涙を溜めて、横島を責めるように悲しそうに見つめる


「いやいやいや… そんなこと無いっす! ただその辞めるならハッキリした方がいいかと思いまして。 それにGS免許の問題もありますし…」

オドオドしながら必死に首を横に振り説明する横島

まさか涙目で訴えられるとは思わなかったらしい


「本当ですか!? 私に飽きたとかじゃないんですね!」

人目も気にせず涙目で見上げる小竜姫の姿に、横島は慌てて頷く


「そうですか、良かった… じゃあ今からバイトを辞めに行きましょう」

自分の心配が誤解だと悟った小竜姫は、さっそくバイトを辞めさせようと美神事務所に向かう

というか、小竜姫は辞めさせたつもりだったのだ


(前に話した時、辞めて無かったんですね。 将来を考えると横島さんがGSをするのはマズイですからね)

再び横島の腕を組み歩き出す小竜姫

自分と横島の将来を考えると、横島がGSをするのは有り得ないと思っている

小竜姫の中では、かなり明確な将来まで考えているようだ


「あの~、小竜姫様。 辞めるのはいいんすけど、GS免許は仮免なんで困る気がするんですが…」

あっさりと辞めることに決めて歩き出す小竜姫に、横島はGS免許をどうするのか聞いていた

横島としてはGSになりたい訳ではないが、せっかく苦労して手に入れた資格が無くなるのはもったいない気がしている


「GS免許? 要りませんよ。 それとも私よりGS免許が大切ですか?」

「そんなこと無いっす! もちろん小竜姫様が一番っす!」
 
何故小竜姫がGS免許と自分を比べるのか理解出来ない横島だが、そこまで言われるとあっさりGS免許を諦めた


横島としては小竜姫の機嫌を損ねる選択は有り得ない

毎日美味しいご飯におやつまで作ってくれる上、スキンシップもかなり許されている

こんな今までに無い幸せを無くさないように、横島なりに気を使っていたのだ


「さっさと辞めて、昨日のぷりくらと言うのを撮りに行きましょう!」

小竜姫は嬉しそうに横島をリードして行く

頭の中は早く遊びに行きたいようである


二人はそんな調子で美神事務所に向かっていた


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