幻の初恋

令子を捕獲…じゃなくて迎えに行くことにしたおキヌ

事務所にあるお金をいくらか持ち出して、タクシーで令子の隠れてるホテルに向かう

ちなみにお金の隠し場所などは、全て人工幽霊が報告済みである


ニコニコと優しい笑顔のおキヌは、タクシーの運転手と世間話をしながら向かっていたが

そんな時、おキヌは偶然見てしまう

買い物袋を手に持ち、腕を組みながら歩く横島と小竜姫を…


(横島さん…)

一瞬寂しそうな表情をするおキヌだが、すぐに無表情に変わる

(美神さんが早く取り返さないから…)


その時、運転手は何故か死の危険を感じて急ブレーキを踏んでしまう

キーー!!


「あっ…」

「すいません。 今なんか危なかったような気がして…」

突然の急ブレーキに体勢を崩されたおキヌに謝る運転手

おキヌは笑顔に戻り、大丈夫だと伝えて再び車は走り出す


(みんな美神さんが悪いんです…)

令子の知らないところで、本日のお仕置きが追加されたのは言うまでも無い



そんな軽いアクシデントはあったが、無事ホテルに到着したおキヌは令子の部屋の前にいた

コンコン…


ノックするが返事は無い

コンコン…


再びノックするが全く音もしない


「中に居るのはわかってますよ。 美神さん」

おキヌは声をかけるが、それでも令子は現れない



その少し前令子は…


「組長? 至急偽造パスポートが欲しいんだけど! 早くして!! お金ならいくらでも払うからっ!」

どうやら海外逃亡を計画しているようだ

令子自身、財産を全ておキヌに押さえられてることを知らないらしい


コンコン…

コンコン…


そんな時、ドアをノックする音がする

ビクッと魂からの震えを感じた令子は、電話を切り物音たてないようにドアの方へ歩み寄る


「中に居るのはわかってますよ。 美神さん」

その声に令子の全身は真っ白になってしまう


(ヒッ… おっ おっ おキヌちゃん なっなんで此処が…)

あまりの恐怖に腰を抜かしてしまう令子

それでも逃げようと必死になるが、体が動かない


その時、ドアから手が現れる

おキヌは幽体離脱して部屋の鍵を開けようとしたのだ


カチ

鍵の開いたドアが静かに開かれる


ドアの前で真っ白になって恐怖で固まっている令子を見て、おキヌはニッコリ微笑む


「みかみさん… むかえにきましたよ。 さあ、かえりましょうね」

「あっ…あっ…あっ…あの…ね。 ちょっと仕事の打ち合わせでね… 逃げた訳じゃ…無いのよ?」

ダラダラと全身から冷や汗が流れ落ちる中、令子は必死に言い訳しようとするが…

おキヌの微笑みは一瞬も変わらない


「うふふ… 今夜は長い夜になりますね。 美神さん♪ さあ、帰りますよ」

おキヌがそう告げると、令子はピシッと立ち上がる

もはや令子の体は本人の意志より、おキヌの命令が優先されるようだ


まるで、売られていく子牛のように帰っていく令子

彼女の夜は始まったばかりである

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