幻の初恋

その頃、ゲームセンターに入った小竜姫は目を白黒させて驚いていた


「よっ横島さん! 人界はこんな場所もあるんですね…」

つい最近までカラーテレビすら知らなかった小竜姫は、まるで別世界へ迷い込んだようである


「これはなんです? 箱の中に人形が入ってますね~」

不思議そうにUFOキャッチャーを見ながら、横島の腕を引っ張る小竜姫

最早、自分が神族の武神であるという事実はすっかり忘れているようだ


「ああ、これはUFOキャッチャーって言って、中のぬいぐるみを取るゲームですよ」

まるでチビ小竜姫に戻ったように、驚き目を輝かせる小竜姫に横島も嬉しそうである


「ちょっと待って下さいね」

横島は中をのぞき込んで、一つのぬいぐるみをゲットした


「あっ!? お~ すごいですね」

器用にアームがぬいぐるみを掴む様子に驚く小竜姫


「こんなふうにぬいぐるみを取るんすよ。 欲しいやつ無いっすか?」

横島が説明しながら、取ったぬいぐるみを小竜姫に渡す


「これ… 頂けるんですか!?」

ぬいぐるみと横島を交互に見ながら嬉しそうに笑顔を見せる小竜姫

どうやらぬいぐるみがもらえるとは思わなかったらしい


「そうっすよ。 うまくいけばもらえます」


横島の説明にふんふんと頷き、ようやく理解した小竜姫は自分でも挑戦してみるが、うまくいかない

「横島さん! 上手く行きません!」

何度か挑戦するが全く取れないゲームに、小竜姫は不満らしく目に涙を浮かべ始める


「じゃあ、俺が取ってあげますよ」

小竜姫の様子に少し慌てた横島が挑戦すると、すんなりぬいぐるみを取ってしまう


「うう~ 悔しいです!」

自分が全く取れないぬいぐるみを横島が簡単に取ったことが悔しい小竜姫


「いや、初めてならそんなもんすよ。 コツとか教えますから」

なんとか小竜姫の機嫌を取っていく横島

結局小竜姫はぬいぐるみを取れなかったが、横島が取ったぬいぐるみを貰えたのが嬉しいようで機嫌は直っていた


その後横島と小竜姫は一緒にプリクラを撮り、小竜姫も楽しめるようなゲームを少しやってゲームセンターを後にする


「楽しかったですね横島さん! また来ましょうね」

ぬいぐるみとプリクラを手にした小竜姫はご機嫌であった

初めてのゲームセンターだったが、小竜姫はかなり気に入ったようだ


「そうっすね。 ゲームセンターくらいならいつでも来れますよ」

小竜姫の普段見ないような姿を横島は新鮮な気持ちで見ていた

そんな2人はイチャイチャしながら商店街を歩いていく



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