幻の初恋

学校中の生徒が絶叫し驚く中、横島は逃げるように校門に走っていく


「ハァ… ハァ… ハァ… 小竜姫様どうしたんすか? 突然学校に来るなんて」

全力で走って来た横島は息を切らしながら小竜姫に問いかける

突然来たのだから何かあったかと思ったようだ


「買い物行きたいので、横島さんと一緒に行こうかと思って待ってました♪」

ニコニコと笑顔の小竜姫

その服装と共によく似合っており、とても武神には見えない

角はあるが、彼女を神様だと気付く人はいないだろう


「ああ、そうっすか。 いや~ 事件かと思ってビックリしましたよ」

ホッとしたように笑う横島に小竜姫はそっと腕を絡ませる


「えっ!? しょっ しょっ 小竜姫さま!! むっ むっ 胸が…」

横島の腕には小竜姫の胸がしっかりと当たっている

大きくはないが、柔らかく確かな弾力があるその胸に横島の神経は腕に集まってしまう


まるで壊れたレコードのように言葉が途切れ途切れになる横島

しかしその表情は素直で、幸せそうにニヤケていた


「何か問題でもありますか? ご迷惑なら辞めますが…」

横島の腕にしがみつくようにしている小竜姫は、少し潤んでいる瞳で寂しそうに見つめる


「全然問題は無いであります!! 私、横島忠夫は幸せであります!!」

妙な口調で言いきる横島だが、緩んだ表情は締まらない


(胸が… 胸が… 胸が… ちょっと小ぶりだけど、なんて気持ちいいんだ~ これは夢か!? 夢ならこの場で襲っても構わんだろうか!?」

「この場所で暴走したら一週間膝枕お預けですよ?」

あまりに夢のような出来事に思考がトリップしている横島は、どうやら全て口に出していることに気が付いて無いようだ

そんな横島の耳元で、笑顔の小竜姫は暴走をさせないようにささやく


「えっ…!? もしかして、今の声に出してましたか?」

横島は少し顔が青ざめる

何やらヤバいことも口走った気がしたのだ


「はい。 人前で飛びかかって来たらダメですよ」

小竜姫は笑顔を崩さずに言い切るが、内心は少しムッとしていた

(横島さん、今夜の修行は少し厳しくしますからね)

彼女がムッとした理由は主に胸の話である

《ちょっと小ぶり》

この言葉が微妙に気に入らない

(私の胸を見た訳でも無いのに…)

納得のいかない気持ちを隠しつつ、笑顔の小竜姫と横島は共に街に向かって歩き出す


「さあ横島さん、買い物に行きましょう」

小竜姫は学校の方から来る、嫉妬やねたみの視線を背中に感じつつ

これで自分の存在を学校中にアピール出来たと幸せな気持ちであった


「はい! はあ~ 幸せや~」

締まりの忘れたような横島の表情だが…

小竜姫も幸せそうであり、端からみたらイチャつくカップルにしか見えない


そんな調子で2人は学校を後にした



その頃、横島の消えた教室では…


「お昼の話は本当だったんですね…」

信じられないような表情で呟くピート


教室内ではクラスメートが様々な様子でショックを受けている

先ほどの横島と小竜姫様の様子は、教室からはイチャついていたようにしか見えなく

会話も聞こえない為、2人が恋人関係なのは誰が見ても明らかであった


そして、そんな横島の様子を無表情で見つめていたのは愛子である


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