幻の初恋

その時、妙神山では小竜姫対令子の対決を見て様々な反応を示していた


「小竜姫の勝ちなのね~」

「あの美神さんが泣いて逃げるとは…」

お腹を抱えて笑い転がるヒャクメの後ろでは、ジークが驚き苦笑いしている


「うむ… 確かに勝ったが、これでは小竜姫を止めれる者は最早居ないのでは…?」

老師は小竜姫対令子の対決を見終わったら、ゲームを初めていた

どうやら小竜姫の居ない間に、禁止されたゲームを楽しむようだ


「横島に期待するしか無いでちゅね…」

パピリオは老師と一緒にゲームをしながらニヤリと笑う


「小竜姫は融通が効かんからのう。 横島と2人合わせるとちょうどいいんじゃが…」

老師はしばし真剣に考え込むが…

「あー! パピリオ そのハメ技は卑怯じゃ!」

老師の一瞬の隙を突いて、パピリオがハメ技を使ったらしい


「猿ジィがいつも使ってるじゃないでちゅか!!」

どうやら老師はパピリオ相手にいつもハメ技を使うらしい



「面白かったのね~」

さすがに昨日のお仕置きが嫌だったのか、ヒャクメは小竜姫が帰って来るだいぶ前に覗きを止めてカバンをしまう


「では私は昼食を持って来ます」

ジークは覗きがバレないように、いつもと同じ時間に昼食にしようと台所に向かう


妙神山は相変わらずな様子であった



そして、小竜姫から逃げ出した令子は、隣のオカルトGメンに逃げ込んでいた


「ママ! 聞いてよ!! 小竜姫様が…」

令子は大人に告げ口する子供のように、先ほどの小竜姫との対決を美智恵に話していく


「令子、彼を取り返したければ自分で戦いなさい。 あなたは美神家の女なのです。 やれば出来るはずよ」

美智恵は一見、厳しさの中にも優しさの見える表情で語るが、本心は自分が関わりたくないだけのようだ


「うぅ~ 貧乏神だけは嫌なのよー!!」

令子の涙混じりの絶叫が、オカルトGメンに響き渡る



「ただいま~」

その頃、無人の美神事務所におキヌが帰宅していた


「人工幽霊?」

おキヌは人工幽霊の返事が無いので、不思議そうに話しかける


「……う…ん おキヌさん?」

令子と小竜姫の対決で気絶していた人工幽霊は、おキヌの声に意識を回復した


「何かあったの?」

心配そうに人工幽霊に問いかけるおキヌ


「実は…、先ほど横島さんと小竜姫様がきまして…」

人工幽霊は少し疲れたような声でおキヌに先ほどの説明をする


「えっ…!?」

おキヌはその話に言葉を失う

小竜姫と令子が横島を取り合いしていたとは、信じられなかった


「映像を見せて下さい」

おキヌは不安そうに、先ほどの修羅場の映像を見始めた


初めは不安そうなおキヌの表情が、どんどん無表情に変わっていく


そして、小竜姫が横島を抱き締めたり、横島と一緒に寝てると話した時には…


最早そこに居たのはおキヌでは無かった


「クスクス… 美神さんもだらしがないですね~」

おキヌはニッコリ笑みを浮かべて呟き、その体からは漆黒のオーラが溢れ出している


「おっ…おキヌさん!?」

人工幽霊はおキヌのその姿にまるで引きつったように声をかけた


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