幻の初恋

「よこしま~! 助けるでちゅ! 可愛い妹のピンチでちゅ!」

パピリオはバタバタ暴れながら狸寝入りする横島に助けを求める


ビクッ!!

横島の体が一緒動いたが、すぐに何事も無かったかのように動かなくなる


「《私の横島さん》の布団に勝手に潜り込んでタダで済むはずは無いでしょう?」

小竜姫は一部を特別強調してパピリオに微笑む


「パ…パピは小竜姫の味方でちゅよ。 よこしまの結婚相手には小竜姫が一番だと思うでちゅ」

パピリオは顔面蒼白で必死に小竜姫の機嫌をとる


ピクッ

その言葉に小竜姫のパピリオを掴む力が弱まる


「優しい小竜姫ならよこしまは幸せになれるでちゅからね! いい奥さんになれるでちゅ。 パピは優しい義理のお姉ちゃんが出来て嬉しいでちゅ…」

パピリオは小竜姫の変化を悟り、ご機嫌とりを続ける


小竜姫は、最初そんなわかりきったお世辞を言ってと思い、パピリオを睨むが


《いい奥さんになれる》

この言葉に表情が緩んでしまう

小竜姫の力が弱まった隙にパピリオは脱出に成功する


「恋人達の時間を邪魔しちゃわるいでちゅから、わたちは行くでちゅ」

パピリオは小竜姫がなにやら妄想し始めた瞬間に逃げ出した


走り去るパピリオの表情は悪魔のような笑みがニヤリと浮かんでいる

「小竜姫は単純でちゅ…」

パピリオは小さくつぶやき、逃走に成功した


「そんな… 奥さんだなんて~」

残された小竜姫は甘い新婚生活を妄想して、顔を赤らめて恥ずかしそうにしている


「パピリオ… 成長したな」

横島はパピリオの危機回避能力の成長を喜ぶ


そんな時横島がふと見上げると、小竜姫が緩んだ表情で何やら妄想している


「しょ… 小竜姫さまー!!」

いつも凛として美しい小竜姫の乙女のような表情に、横島の煩悩のスイッチが入ってしまったようだ

横島は突然起き上がると小竜姫に飛びかかる


「キャッ!? 旦那様?」

小竜姫は何故か横島を旦那様と呼ぶ

どうやら小竜姫の妄想はかなり進んでいたようである


「温かいな~ 柔らかいな~」

横島は小竜姫に抱きつき体を触ってスリスリし始める


「えっ!? あれ!? 横島さん?」

小竜姫は現実に戻ったらしく、突然横島に抱きつかれている状況に混乱している


「小竜姫さまー!!」

小竜姫は正気に戻ったが、横島は完全に燃えていた


「ちょっと! 待って下さい! もう少しムードを考えて下さい!!」

小竜姫は竜気を発して横島を吹き飛ばして、横島に説教を始める


「横島さん! もっとムードを考えて下さい! 物には順番があります! 別に嫌な訳じゃないんですよ… でもこんなムードの無いのは嫌です」

小竜姫は横島を正座させて、1時間ばかり説教を続ける

怒ってると言うよりは拗ねた表情に近い小竜姫

どうも小竜姫の理想?(妄想)とあまりに違った展開に、少々拗ねてるようだ


拗ねた表情で説教するが、途中恥ずかしそうにしたり熱い視線を横島に向けたりするその様子は、痴話喧嘩にしか見えないだろう


こんなことをしている間に、この日も横島は学校に行けなかったのは、仕方ない運命だろう


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