その一

結局この出来事を境に数人の男子は聖人君子とのアダ名で呼ばれるようになり、他のクラスメートから逆にいじられるようになる。

今まで横島の嫌がるネタをいじり笑いにしていただけに彼らがいじられる側に回ったからといって考慮してくれるようなクラスメートは居なく、特に今まで一緒に横島をいじって笑っていた男子からは盛大にいじられるはめになる。

ただ女子に関しては正直横島ほど面白い反応はないのですぐに飽きて笑いもしなくなり、横島に関しても元々彼らと友達ではなくただのクラスメートでしかなかった為に、彼らから絡まれることがなくなると話もしなくなるが高校のクラスメートなんてそんなもんだろう。


「ねえねえ、彼女とどうやって知り合ったの!?」

「デートはどこ行くの?」

そして結果的に今回はつるし上げが行われなかった横島だが、だからといって横島の周辺が静かになることはなかった。

今度は女子達が横島からかおりとのことを聞き出そうとして詰め寄ることになり、横島としてはいまいち落ち着かない現状は変わらないままだった。

ここで付き合ってないと訂正するのは割と簡単なのだが、そうすると余計に話がややこしくなり下手するとかおりの評判が落ちることになりかねない。

尤もかおりも最低限の保険はかけていてあの時横島と付き合ってるなどとは一言も言ってないのだが、間近で見ていた隣のクラスの二人からしても完全に誤解していて訂正しにくかった。


「なんか大変ね。 横島君って。」

「まさか弓さんと横島さんが付き合うとは。」

一方土曜にかおりと会い横島と一緒の姿を見ている愛子は、なんとなく朧気ながら事情を察しているようで自身がかおりに会ったことは黙ったまま女子に囲まれる横島を見守っている。

そして横島と似たり寄ったりに恋愛に疎いピートはいつの間にか変わっている横島とかおりの関係に驚いていたが、こちらはその辺りを少し知ってるタイガーが口をつぐんでいたので知らなかったらしい。

先日の風邪の際に情報を流したり横島とかおりの関係をクラスメートに黙っていたりと、地味ながら何故か横島とかおりの関係のキューピットの一翼を担っていた。

タイガーも横島もお互いにタイガーに彼女が居たり横島がモテたりすると嫉妬する関係ではあるが、相手の邪魔までしないので意外にうまくいっている。


「いや時々飯食いに行ったりしてるだけだって。 弓さん俺と違ってちゃんとした霊能者だからそっちの話とか聞いたりしにさ。」

「えー、前にカラオケ屋で見たって噂もあるけど?。」

「……うん、まあカラオケも行ったけど。」

さて女子に根掘り葉掘りと聞かれていた横島だが話したくないと黙秘をしようとするも、あちこちから横島が六道女学院の子と一緒だった姿を見たとの証言が出てくると話さざるおえなくなっていた。

どうも横島をつるし上げにする連中は親しい友達が少ないので知らなかったらしいが、女子なんかは目撃談が少し出回っていたらしく横島と噂の美人の話は密かにいろいろ話が出回っていたらしい。


「肝心な時に奥手になるって、なんか横島君らしいわよね。」

「バレないように近場を避けたみたいだけど甘いわよ。」

ただ女子達は別に横島をつるし上げにしたい訳ではなくリアルな恋愛話を聞きたいだけに、騒ぐ男子に情報が伝わらないようにしながら聞き出すタイミングを見計らっていたようである。

実際横島がモテないモテないと騒ぐのは半ばネタとしての笑い話であり、本人が思うほどモテない訳でないのは横島以外は周知の事実なので今更なのだろうが。


「横島君にはあんなしっかりした彼女がお似合いよね。」

その後横島は昼休みの終わりまで女子達に囲まれたままで、午後の授業時間になると先生にまで横島に彼女が出来たと知られると根掘り葉掘りきかれることになる。

ちなみに聖人君子達はその流れで先生にまで笑われて聖人君子とアダ名で呼ばれ出すが、横島の学校の先生はこんなものだった。


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