「あの、弓さん？」

「全く、何様のつもりなのかしら！」

コーヒーショップを後にした横島とかおりだが、横島はあれほど言わなくてもと思わなくもないしあれではまた誤解されるなと割と冷静に受け止めていたがかおりはまだ怒りが収まらない様子である。


「あれほど酷いとは思いませんでしたわ。」

「いや、あいつらは特殊なんっすよ。」

ぶっちゃけ横島はなんでかおりがこんなに怒るのかあまり理解してなく、なんとか落ち着かせようとするもかおりはまだ納得してなかった。

正直なところかおりはあそこまで酷いとは思ってなくあれではイジメだとすら感じている。

先日愛子から聞いた話で横島を理解してる者がそれなりに居ると聞いていたので、まさかあんな場所であそこまでする相手だとは思いもしなかったというのが本音だろう。


「ってかあれじゃ弓さんが誤解されちゃうんで……。」

「迷惑ですか？ 私と誤解されては。」

まあ横島としては野郎がどうなろうが興味はないが、問題はさっきの発言でかおりが横島の彼女だと誤解されて噂となれば後々かおりが困るだろうということだ。

だがかおりは最早そこには興味がないかのように逆に横島に誤解をされたくないのかと問い掛けると、横島は慌てて違うからと首を横に振る。


「ならいいではありませんか。 私は一向に構いませんから。 あんな連中に馬鹿にされるなど我慢がなりません。 逆に自慢して徹底的に自分の立場を理解させてやればいいんですわ。」

横島が迷惑ではないと悟りホッとするかおりだが、やはり先程の連中が許せないようで横島にももっと徹底的にやればいいと言い始めるのだから横島は以前のかおりとの違いにポカーンとしてしまう。

だがまあ敵だと判断したら容赦しないのは令子と同じであり、かおりもそうなんだろうなと半ば他人事のように感じていた。


「本当にいいんっすか。 下手するとまた騒ぎになりますし、そっちにも伝わる可能性も……。」

「横島さんと一緒の姿ならもう見られてますわよ。 雪之丞の件も別れたとクラスメートには言いましたし。 ですからこちらは別に今更噂されても問題はありませんわ。」

その後も横島はちょっとしつこいくらい本当にいいのかと確認するが、かおりはすでに六道女学院では噂になっていると告げると横島はそれでいいのかと戸惑いすら見せる。

さすがに具体的な噂の内容は言わないが、それがただの友達ならば噂になんてならないのはいくら横島でも想像はたやすい。


「ならいいんっすかね。 まあ俺としちゃあ弓さんと噂されてるだけでどんな噂でも光栄なんでいいんですけど。」

まあモテない横島をキープしてるなんて噂なんだろうなと半ば失礼な誤解をしてしまう横島だが、横島としてはそれは別に構わないというかキープでも噂されるなんてちょっと前から考えるとあり得ないことであり悪い気はしなかった。

流石にこの段階に来てかおりに嫌われてるなんて思うほど馬鹿ではないが、恋愛対象として見られてる自信は全くない。

元々横島の恋愛感覚はルシオラや令子やおキヌの影響でちょっと変なこともあり、いわゆる彼氏にはしたくないが遊ぶにはちょうどいい人という感じなんだろうと横島は思っている。


「そうですわ。 一度横島さんの学校に行きあの連中に改めて会えば……。」

「あー、そこまですると可哀想っすよ。 あいつら立ち直れなくなりますって。」

そのまま話はさっきのクラスメートの件が続くが、かおりはまだ手ぬるいと思ったのかトドメを刺しに横島の学校まで行こうかなんて言いましてしまうと横島は慌てて止めていた。

別にあの連中を庇う訳ではないがかおりがこれ以上何かすればトドメになってしまう気がするし、そこまでしなくてももう十分立ち直れないのではと横島は思っている。

そもそもあの連中が横島のようにメンタルが強くないのは横島が一番理解していた。