その一
家でビデオを見るのも悪くはないが映画館には映画館の迫力があり、それが好きだという人は世の中に多い。
この日二人が見る映画は話題の映画なだけに平日の夕方でも館内はほぼ満席で混雑している。
学校帰りにこうして異性と映画を見るのは高校生ならば誰もが一度は憧れることだろう。
定番と言える飲み物とポップコーンを買い、席に座るが横島が予約した席はちょうど真ん中辺りの一番見やすい場所だった。
「混んでますね。 というか周りはカップルばっかとは。 流石にちょっと俺は場違いっすね。」
映画はかおりが予約のポスターを見ていただけに彼女が好きなラブロマンス物で、ハリウッドの話題作らしく観客の七割は若い男女のカップルで三割は女性のように見える。
「そんなことありませんわよ。」
カップルじゃない男は自分だけではと横島には見えたらしく僅かな嫉妬と場違い感に少し居心地悪そうにしていたが、かおりがそれを否定すると横島は素直にホッとしたというか嬉しそうに笑顔を見せた。
横島が自虐的になるのは今に始まったことではないが、基本的にそれを否定してくれる人はほとんど居ない。
冗談やネタのように笑う者がほとんどで横島自身もそういう方向に話を持っていきがちだが、密かに落ち込みトラウマとして覚えておくという結構めんどくさい性格である。
かおりとしてはそこまで理解はしてないが自分の存在をナチュラルにただの友達だと言いたげな横島には、少し不満も感じるため否定したらしい。
「こうしてると俺と弓さんもカップルに見えるんっすかね?」
「そうかもしれませんわね。」
ちなみに二人の真後ろにはカップルではない三十代女性の友人二人組が座っていて、前の席から聞こえる横島とかおりの会話にため息が止まらない様子だったりする。
横島は自身に場違い感を感じたようだが横島から見えない真後ろで周りをカップルに囲まれた三十路の女二人の方が深刻だった。
しかも横島とかおりの会話に触発されたのか館内が明るい内から周りもいちゃつき始めたのでたまったもんじゃない。
「なんか照れますね。」
「わざわざ言わないで下さい!」
端から見て横島とかおりは付き合う一歩手前のように見えるらしく、半月後のクリスマス前には付き合うんだろうなと周りは見ている。
なんというか見ていて初々しい二人に周りが少々触発されるのも無理はない。
災難なのは純粋に映画を見に来た三十路の二人組だろう。
早く暗くなれと半ば呪詛のように願う三十路の女の気持ちが通じたのか、館内はようやく明かりが消えて映画の予告なんかが始まる。
後ろの三十路の女二人組は出来るだけ周りを気にしないように映画に集中しようとするが、心から楽しめなかったのは言うまでもない。
その後映画が始まると横島とかおりは普通に映画に集中するが、ラブロマンス物には濡れ場が当然ある。
エロビデオなんかでよく見る男女の絡みではない濡れ場は横島にとって意外に新鮮でちょっと興奮気味に見てしまうが、そんな時に限って偶然横島の手にかおりの手が触れると相変わらず臆病な横島はすぐに引っ込めようとするも何故か手を握られてしまい動けなくなってしまう。
一方のかおりは特に狙って手を握った訳ではないが、映画に熱中するあまり少し興奮気味になっていた時に偶然握ってしまったらしい。
かおりはすぐにその事実に我に帰るが、自分から離すのも少し嫌なのでしばらくそのまま横島の手の温もりにドキドキしながら映画を堪能することになる。
この日二人が見る映画は話題の映画なだけに平日の夕方でも館内はほぼ満席で混雑している。
学校帰りにこうして異性と映画を見るのは高校生ならば誰もが一度は憧れることだろう。
定番と言える飲み物とポップコーンを買い、席に座るが横島が予約した席はちょうど真ん中辺りの一番見やすい場所だった。
「混んでますね。 というか周りはカップルばっかとは。 流石にちょっと俺は場違いっすね。」
映画はかおりが予約のポスターを見ていただけに彼女が好きなラブロマンス物で、ハリウッドの話題作らしく観客の七割は若い男女のカップルで三割は女性のように見える。
「そんなことありませんわよ。」
カップルじゃない男は自分だけではと横島には見えたらしく僅かな嫉妬と場違い感に少し居心地悪そうにしていたが、かおりがそれを否定すると横島は素直にホッとしたというか嬉しそうに笑顔を見せた。
横島が自虐的になるのは今に始まったことではないが、基本的にそれを否定してくれる人はほとんど居ない。
冗談やネタのように笑う者がほとんどで横島自身もそういう方向に話を持っていきがちだが、密かに落ち込みトラウマとして覚えておくという結構めんどくさい性格である。
かおりとしてはそこまで理解はしてないが自分の存在をナチュラルにただの友達だと言いたげな横島には、少し不満も感じるため否定したらしい。
「こうしてると俺と弓さんもカップルに見えるんっすかね?」
「そうかもしれませんわね。」
ちなみに二人の真後ろにはカップルではない三十代女性の友人二人組が座っていて、前の席から聞こえる横島とかおりの会話にため息が止まらない様子だったりする。
横島は自身に場違い感を感じたようだが横島から見えない真後ろで周りをカップルに囲まれた三十路の女二人の方が深刻だった。
しかも横島とかおりの会話に触発されたのか館内が明るい内から周りもいちゃつき始めたのでたまったもんじゃない。
「なんか照れますね。」
「わざわざ言わないで下さい!」
端から見て横島とかおりは付き合う一歩手前のように見えるらしく、半月後のクリスマス前には付き合うんだろうなと周りは見ている。
なんというか見ていて初々しい二人に周りが少々触発されるのも無理はない。
災難なのは純粋に映画を見に来た三十路の二人組だろう。
早く暗くなれと半ば呪詛のように願う三十路の女の気持ちが通じたのか、館内はようやく明かりが消えて映画の予告なんかが始まる。
後ろの三十路の女二人組は出来るだけ周りを気にしないように映画に集中しようとするが、心から楽しめなかったのは言うまでもない。
その後映画が始まると横島とかおりは普通に映画に集中するが、ラブロマンス物には濡れ場が当然ある。
エロビデオなんかでよく見る男女の絡みではない濡れ場は横島にとって意外に新鮮でちょっと興奮気味に見てしまうが、そんな時に限って偶然横島の手にかおりの手が触れると相変わらず臆病な横島はすぐに引っ込めようとするも何故か手を握られてしまい動けなくなってしまう。
一方のかおりは特に狙って手を握った訳ではないが、映画に熱中するあまり少し興奮気味になっていた時に偶然握ってしまったらしい。
かおりはすぐにその事実に我に帰るが、自分から離すのも少し嫌なのでしばらくそのまま横島の手の温もりにドキドキしながら映画を堪能することになる。