その一

「あれ、洗濯までしてくれたんっすか?」

その後、愛子と小鳩はあまり長居をするのもと帰り部屋には再び横島とかおりだけになる。

賑やかだった時はなんとかなっていたが賑やかな空間から再び二人にされると、愛子にからかわれたせいか二人とも少し意識してしまい間が持たなくなってしまう。


「ええ、まあ。 風邪の時は着替えは必要かと思いまして。」

二人が帰ったことで横島は再び寝間着が汗で冷たくなっていたので本日二度目の着替えをするが、その時になりようやくかおりが洗濯までしてくれたことに気付く。

横島としては単純に驚いていたのだが、かおりは改めて言われると恥ずかしさが先だつのか横島の脱いだ服を回収しつつ返事をした。

先程福の神の貧にも言われたが客観的に見て友達がすることではないが、横島の場合は幽霊時代のおキヌに洗濯して貰った経験からかかおりほどは意識してない。

ただそんなおキヌでさえ生き返ってからは、恥ずかしさを覚えた影響もあり部屋の掃除や洗濯はしてないのだが。


「雪之丞の洗濯とかもしてたんっすか? あいつが羨ましいな~。」

「雪之丞は元より男の人の洗濯なんて初めてですし、キスもしたこともありませんわ!!」

しかしこの時横島はなんとなくこんなに美人でプライドが高いのに実は家庭的な一面もあるかおりにかつて雪之丞も世話を焼かれていたのかなと思うと、何故かふつふつと面白くないような嫉妬めいた感情がこみ上げて来てしまい雪之丞の洗濯をしたのかとつい聞いてしまう。

それは元々嫉妬深い横島ならではの発言ではあったが、かおりは誤解されたと感じたのか少し不愉快そうに雪之丞には洗濯もしてなければキスもしてないとキッパリ否定した。

まさかとは思うが雪之丞と付き合ったことを理由に嫌われたらと思うと言わないでいられなかったのが本音である。

自分はまだ純潔でキスすらしてないときちんと知って欲しかった。


「そう、そうっすか。 アハハハハ。」

一方突然不愉快そうにキッパリと否定された横島は、余計なことを口にしたことで怒らせてしまったかと慌てた様子で誤魔化しながら笑っていた。

いくら無神経な横島でも女性に別れた過去の男のことを聞くなど失礼であることは知ってはいるのだ。

ただそれでも雪之丞とかおりがどんな形で付き合っていたのか知りたくないといえば嘘になるが。


正直なところ横島もかおりにハマりつつある。

元々外見は好みであるし、その上これだけ甲斐甲斐しく世話をされたら意識するなと言う方が無理があるだろう。

まあ今日のことに限らず横島はかおりと自分は友達以上はないと初めから自分の中に上限を設けて、そこを超えないようにと自分の中で壁を作り今まで本人の意識としては友人として一定の距離を保てていた。

尤も横島も別に一生好きな人や恋人を作る気がない訳ではなく、元々かおりに対しては単純に雪之丞への遠慮からであったが。

しかし横島にはそれとは別にルシオラの問題もあるのでそこは恋人を作る上で避けては通れない。

ルシオラの転生は横島の子供への転生が有力ではあるがこれが実は一筋縄ではいかなく、子供への転生には当然ながら母親となる相手の影響もあるので母親とルシオラの魂の相性や状況により産まれてくる子がルシオラとして記憶まで持ち転生するのか、はたまたルシオラの魂を受け継ぐ人間の子として産まれてくるのかすら現段階では定かでないのだ。

ぶっちゃけ横島としては恋人は欲しいがルシオラの件を打ち明ける勇気がないのが、雪之丞の件が片付いた今もかおりと距離を保てた一番の理由かもしれない。


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