「やっほー、横島君生きてる？」

あまり人付き合いが得意ではないかおりだが、小鳩の方が苦労をした為かかおりと打ち解けようと話をしていき二人はいつの間にか自然に話せるようになっていた。

途中かおりは横島の洗濯物を干したりしながら二人は主に横島の話題で話を続けたが、そんな時第三の女性が横島宅にやって来る。


「九十九神？」

「あっ、愛子さん！？」

やって来たのは横島のクラスメートと言えるかは微妙だが同じ教室に住み着いた机の妖怪愛子であった。

例によって机を背負った姿でやって来た愛子に対応に出たかおりは今度は何なんだと驚くしか出来ない。


「あー、やっぱり寝込んでたわね。 ちゃんと病院行きなさいって言ったのに。」

お世辞にも広いと言えない部屋は寝込む横島に加えて二人と机一体が入ると若干手狭であるが、小鳩が愛子とかおりを橋渡しするように互いに紹介し事情を説明すると愛子は少々呆れた表情をして前日の学校でのことを話始める。

どうも教師や愛子達は横島に病院に行くように勧めたらしいが、寝てればどうせ治るからと聞かなかったらしい。


「それにしても噂の弓さんがこんなに美人だとは。」

「あの、噂とは？」

「横島君と外でけんかしたんでしょ？ 確か誰かの彼女だって聞いたけど。」

相変わらず変なところで頑固な横島に三人はなんとも言えない表情をするも、愛子は横島よりもかおりに会えたことに驚いていた。

かおりとすれば横島のクラスメートに九十九神が居ることすら知らなく何故相手が自分を知っているのかと疑問を抱くも、答えは至極簡単で雪之丞の件で最初に横島に八つ当たりした件が横島の学校で有名だっただけである。


「あの、それにはいろいろ誤解が。」

「でしょうね。 横島君が何かお節介かいいかっこでもしたんでしょ？」

「ええ、そうなんですけどって何故知ってるのですか？」

学年が違う小鳩はどうも一時期横島がつるし上げにされた時の相手がかおりだと知らなかったようだが、クラスメートである愛子は知っていたのはもちろんのことかおりがそもそもあの件が誤解だと説明をしようとすると愛子は分かっていたと笑っていた。

以前聞いた横島の言い方では横島の学校では誤解されたままのはずが、真相が知れていたことにかおりは横島が誰かに真相を話したのかと考えを巡らすが愛子がそれを否定する。


「横島君は多分誰にも話してないわよ。 タイガー君とかピート君も知らないと思う。 でも横島君ってバカでエッチだけど不思議と女の子を本気で怒らせたり泣かせたりしないもの。 何か訳ありなんだろうってことはみんなほとんど気付いてるわよ。」

「そうなのですか？ でもクラスメートに随分責められたと……。」

「ああ、それね。 横島君って意外にもてるから男子には嫉妬されてるのよ。 本人はもてないからつるし上げにされてるって思ってるみたいだけどね。 そもそも本当にもてなかったら誰も相手になんかしないって。」

そのまま愛子はクラスメートという視点から横島の話をしていくが、それは横島から聞いた話とは全く違いかおりを困惑させていく。

だが少し考えれば思い当たる節もあるし、そもそも横島は何処か抜けているというか変なのは今更なのだ。

自分が惚れておキヌも惚れた相手がモテないと決めつけていた間違いにかおりはようやく気付き、以前おキヌが語っていた意外にライバルが多いと言う言葉が今になって頭によみがえってくる。