その一

カラオケボックスの室内に入った横島とかおりだったが、もちろん歌う訳でもなく相変わらず微妙な空気が辺りを支配する。


「ああ、除霊の話か」

嫌われてるとは思いつつもほんの少しだけ邪な期待をしてしまう横島だが、相談内容がおキヌが誘った除霊だと聞くと納得したのかホッと一息つく。


「氷室さんは雪之丞も誘うつもりのようですが……」

「おキヌちゃんも意外と姐御肌なんだよな」

おキヌとしてはせっかくの機会だからとみんなを誘ったのだが、雪之丞とかおりはすでに別れておりかおりとしてはどうするべきか迷ってしまったらしい。


「雪之丞さ、今は香港にいるんだよ。 落ち着いたら連絡よこすって言ってたから、そのうち連絡取れると思うけど弓さんはどうしたいんだ?」

「私は……、正直迷ってます。 気持ちの整理は出来たので一緒でも構いませんが、出来れば会いたくはないのが本音です」

雪之丞が日本に居ないと聞いたかおりだがさほど気にする様子もなく、どうしても会いたくないというほどでもないようだった。

ただ出来れば会いたくないのもまた事実であり、問題はおキヌ達に別れを秘密にしていることだろう。


「それと私としては氷室さんには真相を話してもいいと思うのですが、一文字さんはちょっと……」

先程から横島は聞き役に徹しており、時々質問する形で尋ねる以外はかおりが淡々と迷ってることを語っている。

別れ以降考える時間もあり一人で気持ちの整理は出来たらしいが、相談相手が欲しいことも多かったらしい。

かおり自身も何故横島に相談してるのか少し不思議に感じる瞬間もあるが、この一ヶ月で口の固さは理解したし下手に恋愛対象でないだけに話しやすいのだろう。


「おキヌちゃんは見た目以上に苦労してるから大丈夫だろうな。 秘密は明かさないだろうし受け止めてくれるよ。 ただ一文字さんはなぁ。 俺正直よく知らないんだ」

かおりの悩みは誰にどこまで話すかが一番悩んでるようだった。

本音を言えば魔理にはあまり話したくはないらしいが、おキヌの手間あからさまな差別をするのもまた気が引けるようだ。


「一文字さんも悪い人ではないのですが、私とは価値観が合わないと言うか……」

どうやらかおりの理想は、クラスメートに別れの理由を知られないことらしい。

クラスメートは友人であると同時にGSとしてのライバルでもあるし、何よりオカルト業界と繋がる生徒も多いのであまり下手な噂はされたくないようである。

まあ彼氏に浮気をされて捨てられたなど噂されたら、プライドの高いかおりとしては学校に行けなくなるのだろう。

結局のところおキヌに比べて魔理は信用度が低いらしい。


「あのさ、これは俺の個人的な意見で悪いんだけど。 知られたくないなら誰にも真相は誰にも言わない方がいいと思う」

かおりの真剣な悩みに横島は腕組みをしてしばらく考えていたが、出した答えはかおりが思いもしない答えだった。


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