その一

「いいですね。 なかなか筋がいいですよ。」

そのままかおりの修行が始まるが、やはりかおりは緊張気味なままで小竜姫の方が楽しげである。

本来は霊能の修行は若い方が伸びがよく妙神山の修行も効果的になるのだ。

尤もかおりは正式な修行ではないので大きな伸びが期待できる修行はしてないが、それでもかおりにとっては得難い貴重な時間となる。


「横島さんとは正反対ですね。 GSとしてもいいコンビになるかもしれません。」

現状でのかおりは戦闘力では横島より随分劣るが、知識や基礎をきちんと積み重ねた技術は確かであり才能と実戦経験のみで現状の力を手に入れた横島とは正反対であった。

まあ実戦経験が些か足りないのと戦闘力が不足ではあるが、将来的には令子と横島のコンビに匹敵するコンビにもなれるだろうと小竜姫は見ていた。

元々あまり深く考えずに感性で生きる横島には、令子やかおりのような確かな知識や技術を持ったパートナーが必要なのである。


「さて、それでは私が相手をしてあげましょう。」

何だかんだと考える小竜姫であるが、やはり彼女は才能ある若者を導き育てるのが好きであった。

かおりに対しても基礎的なアドバイスから始まり最終的には小竜姫自身が相手となる手合わせをして指導をしていた。



「うむ、その娘が例の横島の彼女か?」

「はい、そうです。 弓かおりさんです。 こちらは当妙神山修行場の主である斉天大聖老師様です。」

その後かおりの修行は小竜姫が乗り気だったこともあり三時間以上続くが、かおりは気が付いたら修行場に居てキセルでタバコを吸いながら見ていたサルに気付き驚きの表情を浮かべる。

かおりが気が付いたことでサルこと斉天大聖老師が声をかけると、小竜姫が互いに相手を紹介するがかおりは一般人でも誰もが知るような高位の神族である斉天大聖の登場に本日何度目かわからぬが固まってしまう。


「よう修行しとるようじゃな。 その調子で励むがいい。」

そもそも妙神山の主が斉天大聖であることは人間界では全くと言っていいほど知られてなく、斉天大聖の修行を受けたのが妙神山の長い歴史でも人間では横島と雪之丞と令子だけなように、斉天大聖に目通りが叶っただけなのも妙神山では横島達三人を除けばかおりが初めてになる。

斉天大聖はかおりを褒めるような一言を告げると修行場を後にするが、かおりはしばらく固まったまま修行にならなくなっていた。


「運がいいですね。 老師様が人間にお会いになり修行を御覧になられたのは初めてですよ。」

すっかり横島の彼女扱いされてることに最早反論すら出来ないほとかおりは信じられないようで放心状態であるが、この場に斉天大聖が来たことは小竜姫ですら予想外なことだったりする。

まあ斉天大聖本人は半ば野次馬根性で横島の彼女と噂の人間を見に来ただけであったが。


「あっあの……、わっ私は……。」

しばらくするとかおりは事の重大さに気付き今度は斉天大聖に対しても頭も下げなかった事に顔色を真っ青にしてしまうが、小竜姫は褒められたのだし大丈夫だからとかおりを落ち着かせていくことになる。



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