その一

その後おキヌはかおりと魔理に除霊の件を相談してみるが、流石に目的が横島の時給アップであることは伏せていた。

ただこれに対する反応は魔理はやはりやる気になっているものの、かおりは速答を避けて少し考えたいと答えている。

かおりに関しては先に忠告した横島の待遇を変えることもなく、再び協同除霊を持ち出したおキヌに少なからず失望もしていた。

端から見るとこの協同除霊は魔理の為に見えたからだ。

実のところ前回の除霊旅行の後魔理はタイガーやおキヌと修行をしてはいたが、現段階では成果らしい成果は皆無に等しい。

元々霊能の修行は年単位の長い修行が必要なのであり、横島や令子のように簡単に実力が伸びるなど普通はあり得ないのだ。

僅か数週間のしかも放課後の短時間の修行で成果が出る方がおかしいのだが、それでもおキヌは魔理の修行の糸口を見つけたらしく魔理は修行よりも実戦で伸びるタイプではとつい先日かおりにこぼしていたのである。


(確かに一文字さんは実戦で伸びるタイプかもしれませんが、氷室さんは実戦に未熟者を連れていく怖さを理解してません。 万が一の時はどうする気なのでしょうか)

しかしかおりは魔理の問題に口出しする気はないのでおキヌには言わなかったが、現段階で魔理を実戦に出すのは時期尚早だと見ていた。

話を聞く限りでは横島も実戦で育ったタイプなのだろうが、それは令子のような超一流が居て初めて成立するとも言える。

というか訓練や修行の覚えが悪いからと言って実戦に出そうとする辺り、令子もおキヌも一般的な価値観からすると非常識だと思う。

普通は訓練や修行で出来ない事が実戦で出来るはずはないからだ。

GSの失敗は命取りになるのに、わざわざ修行でも出来ない未熟者を実戦に連れていくのはかおりの常識からは理解出来なかった。


「またですか?」

一方横島がこの件を聞かされたのは令子からだったが、横島は話を聞くと露骨にめんどくさそうな表情をする。


「なんでそんな嫌そうなのよ。 あんたが好きな女子高生との仕事なのよ。 しかも報酬は山分けなんだからいいじゃないの。」

「あのメンバーって纏まりがないんっすよ。 一文字さんは除霊に特攻服なんか着て来て周りの視線が痛いですし。 下手にミスして責任取らされるのも嫌ですし。 俺は行かなくてもいんじゃないっすか?」

あまりに露骨に嫌そうな横島に令子はため息混じりに理由を聞くが、別に横島は現状に大きな不満はないし前回の報酬もまだあるのでやる気が全くない。

そもそもかおりとはちょくちょく会っているので別に一緒に仕事をしなくてもいい気がするし、はっきり言えば魔理がめんどくさい。


「……服装に関しては止めるようにおキヌちゃんを通して言うわ。 横島クン、あんたもいい加減独り立ちしないといつまでも仮免卒業出来ないわよ。 いい機会だと思ってやりなさい。」

そんな安定志向で冒険なんかしたくない横島に対し、令子は特攻服だけは止めさせるので横島にも参加するように言い聞かせる。

型に嵌められるのが嫌いで自身も霊衣なんて着ない令子であるが、流石に顧客を不快にさせる特攻服だけはダメだと判断したらしい。

その服装が顧客を不快にさせないなら何でもいいとは思うが。


「おキヌちゃんも優しいのはいいんだけど、巻き込むのは止めて欲しいんだが。」

結局横島は令子には逆らえずに参加させられることになるが、横島もまたかおりと同じくこの話がおキヌ発だと思ったようで巻き込むの止めて欲しいと一人愚痴ることになる。


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