その一

「中はこうなってますのね。」

「ゲームセンターに来たことないんっすか?」

「ええ、不良の溜まり場だと思ってましたので。」

横島の時給や立場をおかしいと言い切ったかおりであるが、その話は横島自身があまり現状を変えたいと思ってないこともあり結局うやむやに終わっている。

かおりとしてはもう少しきちんと話を聞きたい気はするものの、せっかくのデートで話すことではないだろうと今日のところは引いていた。

ただおキヌと令子の評価は急降下していたが。

そして昼食を食べ終えた二人は、かおりが何処か横島のオススメの場所に行きたいと言った結果ゲームセンターに来ている。

どうもゲームセンターが初めてらしいかおりに横島はビックリしていたが、ゲームセンターは不良の溜まり場だという一昔前の価値観を信じていたらしい。


「いや、最近は女子高生とかも結構来てますよ。 ほらプリクラとかUFOキャッチャーとか。」

「流石にプリクラは撮ったことがありますわ。 最近は何処にでもあるので。」

一体かおりがどんな日常を送ってるのか不思議に感じる横島であるが、流石にプリクラは撮ったことがあるらしい。

ただ正直なところかおりは幼い頃から放課後や土日は霊能の修行に費やすことが多かったので、あまり深い友達が居ないなんて事情もある。

高校に入ってからも学校帰りにファーストフードやカラオケに友達と行くことはない訳ではないが、ぶっちゃけ遊びなれてないことや嫌みなくらいプライドが高いことなどから浅く広い友人しか居なかった。


「なかなか難しいですわね。 横島さんを見てると簡単に見えるんですが。」

まるで外は別の世界のような騒がしいゲームセンターの中を興味深げに見ていくかおりであるが、やはり興味を示したのはUFOキャッチャーだった。

横島が先に手本としてやってみるとあっさり取れたことで簡単なんだと思ったようだが、流石にそう簡単な訳ではなく少しむきになり始める。


「いくら弓さんでも一度や二度で上手くはいきませんって。 俺は中学時代に親父とよくやってたんで。」

このままでは無駄にお金を使ってしまいそうだと思った横島は、かおりをなだめつつやり方を教えながら狙っていたぬいぐるみを取ってあげていた。

ちなみに横島にはこの時点においてもかおりを口説こうという気は全くなく、少しはいいところも見せたいと思ったに過ぎない。

かおりの中での横島の好感度はうなぎ登りであるが、横島の特徴としてある程度親しくなると嫌われるのが怖くなるからか意外に口説こうとしなくなることがかおりにも当てはまりつつある。

まあ令子や小竜姫のように簡単に拒否したり撃退したりしても態度が変わらない相手には懲りずに口説きにかかるが。


その後エアーホッケーやガンシューティングなど素人でも出来るゲームを楽しむ二人だが、その様子はただの友達には見えるはずもなく嫉妬の視線を集めていた。


「ちょっと、弓さん!?」

最後にプリクラでも撮ろうかとなったのだが、いざ撮影する段階になるとかおりは横島が慌てるほど密接してしまう。


「あれ、弓さん顔が赤いような……。」

「男性とこんなプリクラを撮って照れないはずがないでしょう!? もう一度撮り直しますわよ!」

互いの体が密着し顔まで近付けたかおりにただただ慌てるだけの横島であるが、撮影された写真を見るとかおりも顔が赤く照れた様子であった。

横島としてはまさかかおりが自分とプリクラを撮って照れるとは思わなかったらしく逆に冷静になってしまうものの、かおりは写真が気に入らないらしく照れ隠しに横島を睨むともう一度密着して撮影をする。


「あかん、胸が……。」

「そう言うことは口に出さないで下さい!!」

そのまま二回目の撮影に入るが今度は密着し過ぎてかおりの胸が横島に当たったらしく、だらしない表情に変わり口に出した横島にかおりは再び睨むと再度撮影し直しをすることになる。

結局二人は撮影回数ギリギリまでなんだかんだと騒ぎ撮り直すことになり、ようやく一枚のプリクラが出来上がっていた。




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